靴の未来


D850 + SIGMA 35mm F1.4 DG HSM

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先日も書いたが、ZOZOでは身体を測定をするスーツの後は、足の形を測定する装置を開発しているという。
しかし足の形がわかれば、それに合う靴を即座に作ることが出来る・・というほど簡単ではないことはご存知の通り。
実際ラストの設計者は独自のノウハウを持っており、微妙に味付けして形を変化させているという。
単純に足の形通りに靴を作ればいいわけではない、ということだ。

靴は履いているうちに形が変化して、段々と足にフィットするようになるものである。
しかもその過程で、靴擦れという痛みを伴う現象が発生することがある。
あなたに合う靴はこれですと機械に指示されて購入した場合、靴擦れが起きると文句が出るのではないかと思う。
まるで耐久テストのように繰り返し折り曲げられ、人間の全体重がかかり踏みつぶされるという、過酷な環境におかれるアイテムなので、靴には衣服のようにはいかない面がある。

そもそも人間の足の形自体が時間によって変化するし、体調によっても日々大きさが変わってくる。
安定しない要素が多いため、完璧なフィッティングというもの自体が存在し得ないのだ。
靴の形状の変化、歩き方の癖、足の表皮の状態など、様々な可変項目がある。
AIを駆使して複雑な計算をすることは出来るだろうが、そのロジックを解明し熟成させるのには時間がかかるだろう。

既成靴の中から合っていそうなものを探し出す程度なら、技術的にそれほど難しくないと思われる。
しかし測定データをもとに靴をオーダーメイドするとなるとどうだろう。
革靴の場合、製造工程にかなり手間がかかることが、低価格のオーダーメイドを実現するのが難しい要因になる。
革を裁断し縫製していくという、工芸品並みの製造方法では対応に限界がある。
低コストでのオーダーメイドを実現させるには、よりオートメーション化された製造方法を開発する必要がある。

昨年文部科学省外局のスポーツ庁より、ウォーキング奨励の一環として、スニーカー通勤を推奨するという発表があった。
スーツを着てスニーカーを履こうというのだから、カッコ悪いという批判も出ているようだ。
当然のことながら、靴メーカーは「一見革靴に見えるスニーカー」の製造に力を入れ始めている。
外観が革靴であれば、スーツと組み合わせてもそれほど違和感は無いだろう。
大衆は常に楽な方に流されるから、今後はビジネスマンはスーツに革靴ではなく、革靴風スニーカーを合わせるのが主流になるかもしれない。
スニーカーにも縫製する個所は多いが、革靴よりもう少し作りやすそうだ。

また革という素材自体が、消え行く運命にあるとも言われている。
いくら革が好きと言っても、それは死んだ動物の皮膚であることに違いはない。
それを身につける行為自体が異常であると指摘されると反論できない。
また供給源が食肉用の牛であることを考えると、安定した供給も望めない。

そのため革風に見せた新しい素材の開発が進んでいる。
牛革が必要な量確保できない時代が来る、と見ているのだろう。
既に人造皮革の靴もいろいろな種類が出ているようだ。
今後は一見本皮と見分けがつかず、通気性などの機能も備えた高性能な新素材が出てくるだろう。

さらに樹脂のように原料が液体の素材であれば、製造方法を根底から変えることが可能になる。
いちいち人間の手で縫製するのではなく、全自動で型に流し込んで作り上げてしまえばいい。
それなら量産が可能であるし、細かい生産要求にもフレキシブルに対応出来る。
型流しと接着剤で作り上げた靴であれば、今回のオーダーメイドの要求にはピッタリである。

ご存知かどうか、既に雨用と謳われた製品で、型にはめて作った樹脂製の靴が販売されている。
それらは実際に革で作った製品から型起こししており、ステッチや皺まで細かく再現されている。
比較的安く販売されているが、ある意味非常に先進的な製品と言えるだろう。
(それについては既にひとつ購入してあるので、近くここでレポートする予定)

いずれにしても「革靴」という伝統的なデザインからすぐには離れることは出来ず、しばらくの間は形だけでもその外観を維持しようとするだろう。
ファッションアイテムなので、バランスを無視して一気に突飛なデザインにしても受け入れてもらえない。
だからと言っていつまでも古い形にとらわれているとも思えず、いつか新しい時代の「履き物」が登場し、そちらが主流に変わっていくのであろう。

まあ、そんなこと言っているうちに、人間が進化すると歩く必要さえなくなり、靴自体がなくなってしまうかもしれないが・・・(笑)
コメント ( 3 ) | Trackback ( 0 )
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コメント
 
 
 
Unknown (Moomin)
2018-02-11 12:46:15
エドワード・グリーンでもジョン・ロブでも何でも
良いが美しい形をした靴をハーフサイズ毎に作る。
これを母型に電鋳を使って型取りをする。電鋳なら
オングストローム単位で革質を再現出来る。これを
もとにして外側の型を作る。

次に3Dスキャナーで読み取った足型のデータをもとに
して内側の型を作る。この内側の型に合う外側の型を
組み合わせて樹脂で射出成型する。美しい外観と最高
の履き心地併せ持つ靴が一丁あがり。

あらかじめ理想的な履きジワも入れておいて型取りを
すれば言うことなし…。

ところで染め替えた靴の色の組み合わせが素敵ですね。
お母上のカラーリングのセンスの良さには脱帽であり
ます。ところでツートン?ツートーン?
 
 
 
Unknown (Moomin)
2018-02-11 12:49:20
某セレクトショップでオールデンのコードバンの
ソックリさんなレインシューズがありましたね。
Colkidさんの続報を楽しみにしています。
 
 
 
Unknown (COLKID@自分の部屋)
2018-02-11 13:39:05
電鋳っていうのは凄いみたいですね。
最初の1個の原型を力を入れて最高品質で作れば、その後のコピーは常にその品質になりますね。

私も靴は内側と外側を別に考えるべきだと思っていました。
今の製法では外側の格好を良くすることを意識して足に不要な負担をかけていますからね。
将来的には内側と外側別々の型の組み合わせになるのではないでしょうか。
完成予想画面を見ながらインナーに合わせてアウトラインの縦横比など微妙に変形させてマッチさせる仕組みになるように思います。

ツートンは悩んだ末にトンにしました。
すでに日本語になっていて、一般でそう使われているので。
ただスリートンの場合三匹の子豚みたいになって困りました。
青い6H-4Eのオールデンは試着が必要でしたらメールください。
 
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