コイン-2


Z9 + NIKKOR Z 50mm f/1.2 S

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これは過って落としたものでではないな・・・
意識して椅子のクッションの隙間に、コインを入れているとしか思えない。
それも過去にこの別荘を借りた人達が、共通してやっているのだ。
次の人のためとか、幸運のおまじないとか、何か意味のあることなのかもしれない。

大量のコインを前に、だんだん不安になってきた。
面白がって椅子の隙間から出してしまったが、何かの風習だとしたら、それを無視してほじくり返してしまったことになる。
考えずにやってしまったが、バチでも当たるのではないか・・・

そもそもこれは遺失物とも言える。
借りた別荘だし、みつけたコインは自分たちのものではない。
ゲームに夢中になるように、つい集めてしまったが、勝手に貰ってしまうわけにはいかない。

結局大人たちから言われて、コインを戻すことになった。
皆でソファーのクッションの隙間に、もう一度コインを落とした。
子供ながらに、何だか損したような気分になった。

もう半世紀も前の話であるが、あれは不思議な出来事として記憶に残っている。
明らかに意図的にソファーの隙間にコインが入れてあった。
でもどういう意味があったのだろう・・・

先日会社にベルギーの資材メーカーの営業の女性が来た。
中年のキリッとした顔立ちの白人の女性である。

仕事の話の前に、女性の経歴など聞いてみたところ、生まれはクロアチアだという。
しかし現在はオーストラリアに住んでいるのだという。
アジア担当なので、その方が都合がいいのだろう。
あちらの人は、けっこう簡単に海外に移住する。

どの国に行ったことがあるか・・という会話の中で、営業の女性が、スペインには25年間住んでいた・・と言った。
その瞬間、あの50年前のコインの話が蘇った。
25年もいたなら、あちらの風習に詳しいはずだと思い、聞いてみることにした。
スペインではソファーの隙間にコインを落とす風習があるのか・・・

しかし女性は、そんな風習は聞いたことがないという。
「それは不思議な話ね・・」とは言ったが、それで話は終わってしまった。
その後すぐに仕事の打ち合わせに入った。

営業の女性は、今回の出張には、オーストラリアから家族も連れてきたのだという。
これから家族と一緒に日本の観光を楽しむつもりらしい。
会議が終わると、昼食の誘いを断り、早々に帰っていった。

というわけで、残念ながら、この話にオチはない。
結局50年来の疑問は解けなかったのである。
おしまい。
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