AI戦争


Z7 + NIKKOR Z MC 105mm f/2.8 VR S

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数日前、NHKスペシャルでAI戦争についての番組が放映された。
内容が衝撃的で、見た多くの人がショックを受けたと思う。
また番組の内容に問題があり、意図的に恐怖を煽っている、という批判も出た。

番組を簡単に説明すると、AIの技術を兵器に活用することで、戦争のあり方が大幅に変わってきた、という内容であった。
AI兵器が今後主流になるのは間違いなく、米国、ロシア、中国といった大国が開発にしのぎを削っている。
兵器のショーには各国の最新型のAI兵器が出展され、製造者が得々と自社製品の優位点を説明する。

アゼルバイジャンでトルコ製のAI兵器が使われ勝利に大きく貢献し、その攻撃時のショッキングな映像が続けざまに流された。
ドローンや無人小型機が、逃げ回る敵兵士たちの後を追いかけていき、自爆して皆殺しにする場面を、その飛行物体の目から撮影した映像である。
従来の戦法通り、武装した兵士を揃えて戦闘に臨んだ側には、まったく勝ち目が無かった。
同じくかつての戦争のイメージしか持たない視聴者にとっても、常識を根底から覆させられる衝撃があった。
これを相手にどう戦えというのか・・・

番組でも問題にしていたのは、AI兵器が自立型かどうかということであった。
AIが自ら考え、対象物が敵かどうか判別して、破壊すべきと決めたら自爆攻撃を仕掛ける。
そこに人間の意思が入らないことが非常に危険であり、仮にAIが故障したりコンピューターウイルスに侵されたりした場合、制御できなくなる可能性がある。

国連でも自立型のAI兵器を禁止しようと動いているが、兵器の開発に精力を注いでいる大国はあまりいい顔をしない。
国連でさえ、AI兵器自体を全面禁止することは考えていない。
大国がAI兵器の開発で遅れを取ると、世界の軍事バランスが崩れて、新たな戦争が勃発することになる。
もはや開発自体は止めることのできない段階に入っているのである。

さらに番組では、やはりAIを利用して、人々の精神面への攻撃が仕掛けられている、というショッキングな例を挙げていた。
実際に国同士の直接的な戦闘が行われるのは、最終段階、あるいは末端の小競り合いの一部分に過ぎず、その前段階で着々と静かな攻撃が進んでいる。
米国の選挙へのロシアの関与や、中国からのハッキングが時折話題になるが、日常的にそういう攻撃が仕掛けられているのだという。

番組では、AIが作ったフェイク画像の流布という手法で、国民が扇動されて国が壊滅するという、恐ろしい未来の予想ドラマが流された。
AIを利用すれば、現時点でも実物とまったく見分けられない映像をゼロから作り上げることが出来る。
身体のデータからその人物が話す映像を精密に作り出し、口の動き方も台詞にピッタリ合わせ、しかもそれがフェイクと分からない品質で仕上がっている。
以前のように動きが「見るからにCG」という感じではないのだ。

国家元首クラスの重要人物が問題発言をする場面を捏造し、それを見た国民が騒然となったところで、コンピューターウイルスでインフラ制御システムを攻撃し、電気を止めてしまう。
そうすれば人々は暴徒化し国は破壊され滅茶苦茶になる。
それが新しい時代の戦争のやり方なのだという。

我々は日常的にインターネットを利用して大量の情報を得ている。
情報の信頼性の判断も常に行うわけだが、その能力に長けた人でも、断言できないあやふやな部分は残る。
また個人の情報処理能力には限界があり、情報に翻弄される人は今回のコロナ騒ぎでも大勢出ている。

そこに本物と見分けのつかない生々しいフェイク映像を拡散されたら、それこそ大混乱に陥るだろう。
多くの情報を得て、それを元に真実を探り出そうというネット社会でのあり方が、AIによって上手く使われてしまうのだ。
新しい技術は、往々にして軍事的な利用によって一気に進む。
人々の生活をよりよい方向に変えてくれるはずであったAIが、恐ろしい敵へと変貌しつつあり、しかももう後戻り出来ない状況なのだ。
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