カレンダーの絵


Z7 + NIKKOR Z 50mm f/1.8 S

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母親のところで、どこかのお店で貰ってくる1枚物のカレンダーを毎年飾っている。
女性の人物画で、なかなかいい絵の時もある。
実際10年ほど前のカレンダーの絵を特別気に入って、母親はその1枚だけまだ壁に飾っているほどである。

ところが最新のものを見てちょっと驚いた。
技術的には非常に高度なものだ。
驚くほど写実的で精密な絵画で、一瞬写真と見紛うほどの出来である。
しかしモデルというか、題材にどこか異質なものを感じさせるのだ。

若い女の子がひらひらの付いたドレスを着て、椅子に座り物思いに耽る姿を描いている。
もちろん可愛らしい子であるが、その顔つきや化粧、髪型が、非常に現代風なのだ。
AKBのメンバーのひとり・・という感じである。

さらにはドレスも、秋葉原に行くと着た子が街角に立っていそうなデザインのものである。
日常ではまず着ることはないもの・・すなわちコスプレをイメージさせる。
そういう姿を正統派の描き方で、しかも飛びぬけて綿密に描写しているため、どう評価していいのか分からず戸惑うのだ。

コスプレというのは、意図的に演出した一種のパロディである。
「本物」とは根本的に違う。
むしろ「偽物」であることを逆手にとって楽しむ行為といえるだろう。

一方で我々は芸術にどこか「本物」であり「正統」であることを求めているように思う。
ところがその絵画は、偽の世界を正統派の技法で描いている。
その不整合が画家の意図的なものなのか、あるいは当人にとってはこれこそが本物の世界なのか・・・
見る者はそこが分からず混乱する。

芸術にいつまでも古臭い伝統を押し付けるべきではない。
これこそが新しい時代の絵画がなのだと言われれば、そうなのかとも思う。
ただ気に入るかどうかは別である。
保守的で常識的な鑑賞者である母親は、その絵をあまり気に入ってはいないようだ。
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