羽根の開き


D850 + SIGMA 35mm F1.4 DG HSM

大きな画像

都内の某デパートでヨーロッパ製の靴を試着したところ、靴の大きさはほぼOKだったのに、羽根が閉じてしまった。
担当したベテランの店員さんが「ああ、閉じちゃいますね」と即座に言った。
羽根が閉じるのは良くないこと・・という見方である。
インソールなどの併用で何とかなるだろうと思い、結局その靴を購入したのだが、店員さんは最後までウーン・・という顔であった。

その数日後、都内の別のデパートで、やはりヨーロッパ製の別の靴を試着した時に、またも羽根が閉じ気味になった。
若手の店員さんが「羽根が閉じますね」とすぐに指摘した。
そして靴の上から手で触り張り具合を確かめて、
「でもサイズをこれより小さくするのは危険です。この靴ではこのサイズがベストでしょうね」
と言った。
つまりその靴に関しては、僕の足に合った大きさを選んでも羽根が閉じてしまう、ということだ。
店員さんによれば、実際には羽根がしっかり開く人の方が稀で、ほとんどのお客さんは閉じてしまうのだそうだ。

以前は幅広・甲高というのが日本人の足の特徴とされていた。
そのためいまだに街の大型靴店などでは、3Eサイズなどという幅広の靴が売られている。
幅広だから楽に履ける・・ということを謳っているのだ。
履く方もタイトフィットの革靴は蒸れるからと敬遠する傾向が強く、スニーカーのようにソフトに履ける靴を好むのだろう。

しかし時代とともに人の足の形も変化している。
食べ物が変わり、歩行距離も短くなったことで、日本人の足の形自体が変わり、幅が狭く甲の低い若者が多くなってきたのだ。
僕でさえ、幅こそ広めだが甲は低い。

欧州の靴を横から見ると分かるが、羽根の部分が盛り上がっており、全般に甲高に作られている。
それに対しアメリカの靴は甲が低めのものが多い。
そのため僕の場合は、アメリカ靴の方が足に合っており快適に履くことが出来る。

アメリカ靴の場合、羽根が開く事がかなり重要な条件で、羽根が閉じてしまうのはカッコ悪い・・という考えが強くある。
中古の古靴を見ると、前オーナーがタンの裏側にフェルトのようなものを張り付けていることがある。
昔から羽根の開き具合には気を遣って履いているのだ。

一方ヨーロッパの靴に関しては、日本では羽根が閉じた状態で履いている人をよく見かける。
羽根がピッタリ閉じるのが正しい履き方だ・・と説明してくれた人もいる。
そもそも靴が甲高に作られているので、必然的に閉じ気味になってしまう。

しかしここで注目すべきは、冒頭に書いた通り、デパートの靴売り場の店員さんが揃って同じことを言ったという事実だ。
どちらも欧州製の靴であったが、羽根が閉じるのはカッコ悪い・・という見解であった。
案外お客の側にも、羽根の開き具合を気にする人が多くなってきたのかもしれない。

靴自体が甲高に作られている場合は根本的な解決は難しいのだが、タン・パッドというクッションを舌革の裏側に貼る事で、見かけ上羽根を開くことが出来る。
下の写真はペダックから出ているスープラという製品だ。
起毛革に低反発ウレタンが入っており、粘着テープで舌革の裏側にに貼り付けて使用する。
意外に強固に固定することが出来る。
ただ厚みは程々なので、貼っても開くのはせいぜい数ミリで、靴下を厚めのものに替えた程度の効果にとどまる。
羽根の開きより、舌革が当たって痛い時などに使用するものなのかもしれない。



調べたところタン・パッドは何種類か出ており、前述のアメリカ靴によく見られるフェルト製のものも、今でも売られているようだ。
しかしデパートの靴売り場に行っても、タン・パッドは扱っていない事が多い。
それほど需要が無いのであろう。
今回もハンズには置いてなく、靴用品の専門店に電話したら少量あるというので、そこまで買いに行った。

個人的には羽根が開かないとカッコ悪い・・という見方が広まることは歓迎だ。
しかし見たところこの分野はまだ研究の余地があるように感じる。
もう一工夫して、上手い具合に羽根を開いた状態に見せてくれるグッズを、誰か開発してくれないだろうか。
コメント ( 12 ) | Trackback ( 0 )