メール魔


D850 + SIGMA 35mm F1.4 DG HSM

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「電話魔」というエド・マクベインの小説がある。
87分署シリーズのひとつで、高校生の頃に夢中になって読んだ。
確率の計算式に基づいて犯罪を犯す天才的な犯人に、警察官たちが翻弄されるシリーズ屈指の傑作である。

それと直接関係はないのだが、知人の話を聞いて、「メール魔」という言葉が思わず浮かんだ。
知人の会社では、一般ユーザーからの製品に対する質問のメールに、ひとつひとつ丁寧に対応している。
毎日のように何通か質問があり、対応の手間は大変であるが、ネット時代に生きるメーカーのひとつのあり方ではないかと知人は考えている。

ほとんどの人は常識的なメールのやり取りで済む。
知人がしっかり回答すれば、感謝のメールをいただき、かえって恐縮することもあるという。
しかし年に数回程度だが、少々面倒な人からのメールが混ざることがあるようだ。

性別はあまり関係なく、男女でほぼ同数の割合であるという。
年齢的には中年の人が多いようだ。
最初はまあ普通の質問であるように見える。
ところがそれに対し丁寧に答えると、そこからメール攻撃が始まる。

ひとつの疑問が解決すると、次の質問が出てくる。
それ自体は普通のことであるが、その度合いが激しく、一日に何回も質問メールを送ってくる。
知人は当然それらのメールに毎回丁寧に対応する。
すると際限がなくなり、あれはどうなのか、これはどうなのかと、永遠に続くかのように連続して質問が来るようになる。
休みの日など返信できないでいると、答えを待たずに思いついた疑問点をメールで次々に聞いてくる。

この人は自分の質問に答えてくれる、と分かったところから、態度が変化するようにも見えるという。
一生懸命に答えたことが、かえって仇になってしまうのだ。
かといって、メーカーは質問に対しては誠実に答えるべきだという信念から、知人はそれを止めることは出来ない。
最後はまるで人生相談のようになってしまい、知人もほとほと疲れ果ててしまうようだ。
メーカーがどこまで対応出来るか見たくて、わざとやっているのではないかと疑いたくなることもあるという。

一番最初のメールのやり取りで、これは危ない相手だなと見極める必要がある。
その場合深入りせずに、なるべくあっさりとした返事を返すようにする。
残念なことではあるが、結局誠意もほどほどにしないと痛い目に遭う、ということだろう。

大手のメーカーでは、お客様相談窓口の部署の人が、精神的に病んでしまい辞める事が多いと聞く。
メーカーにメールで質問しても、返事がやけに素っ気無いことがある。
あれは恐らく散々そういうパターンに遭遇した上で得たノウハウなのだろう。
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