煽り


D850 + AF-S NIKKOR 85mm f/1.4G

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高速道路で人の車を煽って事故を巻き起こした犯人が一時話題になった。
その事件が起きて以降も、似たような話が連続して発生し報道されている。
あれだけ話題になって世間から非難を浴びても発生するということは、恐らく日常的に起こっていることなのだろう。
話題になりマスコミに取り上げられる機会が増えただけなのか。

話を聞いていると、カッとなると制御不能に陥るタイプの人間の場合と、何らかの目的で意図的に罠を仕掛けるタイプの場合があるようだ。
前者の場合、自身のコントロールが効かなくなり暴力行為に及ぶのだから精神病ともいえる。
後者の場合は完全に悪人、最初から価値観の違う人間である。
どちらも話の通じる相手ではないので、仮にこちらに正義があったとしても、自分が正しいのだから諭してやる、という行動を取るべきではないだろう。

僕も30年以上運転をしているが、トラブルに巻き込まれそうになった事が何度かある。
どうも年中そういう目に遭っている人もいるようなので、運転の仕方や態度、それに乗っている車の車種などで、事件に巻き込まれやすい傾向の人がいるのかもしれない。
僕の場合自分が飛ばす方だったが、それほどそういう機会は多くなかった。

後ろから煽ってくる相手はもちろん時折いるが、競う気はなくすぐに道を譲る。
道を塞ぐことで嫌がらせをするような悪質な相手なら、こちらが次の交差点ですっと曲って別のコースをとり、なるべく近付かないようにする。
飛ばすといっても自分の車のハンドリングを楽しむだけで、他人と競い合うつもりはない。

何年も前の話であるが、コンビニに曲って入ったところ、すぐ後からトラックが追いかけるように入ってきて僕の隣に停めた。
そして運転手の若い男が勢い込んでこちらに走ってきて、何で急に停まって曲った、危ないだろうと怒鳴った。
こちらはそんなこと思ってもみなかったので、驚いて自分が悪かったのなら申し訳なかったと謝った。

その男はテンションが上がっていて、明らかにこちらとはリズムが違っているのがわかった。
あの勢いで走っていれば、路上の車はすべて邪魔者に見えるだろう。
しかし僕が本当に驚いているのを見て、男は一瞬はっと我に返るような表情を見せた。
そしてちょっと考えていたが、それならいい、という感じで戻っていった。

もし僕の方も感情に任せて怒った態度をとれば、そのままエスカレートしてトラブルになっただろう。
しかしこちらが引いたので、相手は調子が狂った感じであった。
これだと「一方的に怒鳴りまくる男」と「冷静に謝る男」の構図になってしまう。
それは相手にとってもあまり好ましくない状況なのだろう。

ただあの男のはっとなった表情は、自分のカッとしやすい性格がまた出てしまった事に気付いたような顔であった。
あるいは何か麻薬のようなものをやっているようにも見えた。
そうだとしたら恐ろしい話で、男が我に返ってくれたのは運がよかったのかもしれない。

若い頃東京の下町を走っていて、前の車がとんでもない運転をしているのに遭遇したことがある。
左右に蛇行し信号が赤でもそのまま停まらずに突っ切っていく。
当然交差点では他の車が慌てて急ブレーキを踏んで停まる。
ヤクザだってあんな恐ろしい運転はしない、という無謀な走り方であった。

後ろから車内のシルエットを見ると、数人の男女がハイになって騒いでいるように見えた。
これは程なく大事故に繋がるだろう。
巻き込まれたら大変なことになると思い、減速してその車から離れた。
そういう人間が運転する恐ろしい車が、我々に混ざって道路の上を走っているということだ。
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