恐怖の虫 その1


D810 + AF-S NIKKOR 35mm f/1.4G

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スーパー南京虫という虫をご存知だろうか?
過去にNHKの番組で特集されたそうなので、ご存知の方も多いかと思う。
この虫がアメリカなど世界規模で社会問題となっており、いよいよ日本でも発生し始めている。
近い将来、日本でも大きな問題になる可能性が高い。

そもそも南京虫というのは俗称で、正式には「トコジラミ」(英語名:ベッドバグ)という昆虫である。
名前はシラミであるが、実際にはカメムシ科に属しており、カメムシと同じように油っぽい臭いを発する。
大きさは成虫で5~8mm程度で、目で見ることが出来る。
人間などの血液を栄養源としており、飛ぶことはないが、かなりの速度で歩くことができる。

昔は日本にも普通にいた。
戦後日本に入ってきた進駐軍がこの虫に悩まされ、DDTの散布を行った。
その結果一度死滅し、1970年代には日本から消えたとされていた。
それがここにきて復活し、恐ろしいことにあちこちで大発生しているのだ。

原因は恐らく外国人観光客だろうと言われている。
外国からの観光客の増加にリンクして、発生量が爆発的に増えだした。
彼らの荷物や衣服などに潜んで運ばれてくるのだ。
特にバックパッカーにくっついてくることが多いという。
ホテルや旅館などで、その荷物から這い出してくるのだ。

僕の伯父は戦争中満州で戦ったが、夜になるとこの南京虫の攻撃に悩まされたと言っていた。
暗くなると物陰から這い出してきて、寝台に這い上がってくる、あるいは天井からポトリと落ちてくる。
刺されるとあまりの痒さに朝まで眠れない。
敵の攻撃よりこちらの方が辛いくらいであったという。
これと同じことが、現在の日本で起きているのだ。

南京虫は光を嫌うので日中は暗闇に潜んでいる。
家具の裏側、壁や床の隙間、ひび割れなどの中に集団で隠れている。
夜になると這い出してきて、人間の体温や吐く息に引き寄せられ、ベッドに上ってくる。
吸血の際に唾液を注入するので、それに人間側がアレルギー反応を起こし、赤く腫れ上がり激しい痒みに襲われる。

スーパー南京虫というのは、一般家庭で使われるピレスロイド系の殺虫剤が効かないタイプの南京虫に付いた名称である。
殺虫剤での駆除を繰り返しているうちに、耐性を持つように遺伝子が変わってしまった個体である。
バルサンなどを焚いても、まったく効果がないという。
外観ではわからないようだが、遺伝子を調べるか、実際に殺虫剤をかけてみればわかる。

そのタイプの南京虫の割合が増えている。
今までの南京虫が薬によって淘汰され、耐性を持つ南京虫のみが生き残った結果である。
南京虫は繁殖力が強くどんどん増えるため、その分遺伝子の変異も早く進むのだ。
日本では最初は千葉で発生したのだそうだが、現時点で全国に広がっており、いまや大半がスーパー南京虫だという情報もある。

彼らは常に変化しており、最近はそれ以外の薬剤に耐性を持つグループも出てきたという。
殺そうとすれば殺そうとするほど、相手も強くなってしまう。
つまり人間がモンスターを作り出しているのである。
いまや人類の生活を脅かす大きな社会問題となっており、現代のもっとも困難な問題のひとつとまで言われている。

つづく
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