LEICA X1

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強い風雨の中を、傘をさして歩いていた。
気流が乱れやすいビルの谷間を通った時、いきなり突風に襲われた。
傘はボンッという音とともに、完全に裏側にひっくり返ってしまった。

強い風が止む様子はなく、傘を直すことも出来ずに、已む無くそのまま歩いた。
強風に煽られて、傘はひっくり返ったままバタバタと音を立てている。
建物の陰に逃げ込んで、何とか折りたたんではみたが、骨が何本か曲がり、あさっての方向を向いている。
変形箇所を無理に直すと折れてしまうので、ゆっくりと慎重に曲がりを修正した。

安物のビニール傘なので、大して惜しいとは思わなかった。
コンビニで数百円で買ったものである。
この手の傘は、通販で買うと百円台のものまである。

傘の専門店では、高級なものや、オーダー品なども扱っている。
しかし、一般的な傘の多くは、いまや消耗品となっているように思う。
使い捨て・・と言ってもいいかもしれない。

中には、出先で天気が回復したら、傘は現場に捨ててくると明言する人もいる。
会社の来訪者の中には、恐らく意識的に、傘をそのまま忘れていく人もいて、ビニール傘が傘立てにどんどん溜まっていく。
あれを見ると、電車の中の遺失物も、わざと置いていった人もいるのではないかと思う。

面白いのは、身に付けている他の物は高級品なのに、割り切って傘だけ安物を選ぶ人がけっこういることだ。
時計や靴は立派なのに、白いビニール傘を平気で抱えている。
バランスとしてはおかしいが、傘に関しては消耗品だから許される・・という考え方が一般化しているのかもしれない。

実のところ、傘は意外に邪魔者なのだ。
傘を持つと片方の手がふさがってしまうし、少しでも荷物を減らすためには、出来れば傘は持たずに家を出たい。
途中雨に降られた時には、出先でひとつ買えばいいだけのことなのだ。

だが、だからと言って、傘を簡単に捨ててしまうのには、ちょっと抵抗がある。
僕の感覚が古いのかもしれないが、あれだけ便利で、しかも結構複雑な構造のモノを、邪魔だからとポイと捨てたり、簡単に失くしてしまうなんて、何て勿体無いのだろうと思う。
環境のことなど顧みず、安いから使い捨てにしていいのだ、という考え方自体に、罪悪感を持ってしまう。
もっともお年寄りでも平気で捨てる人がいるのを見ると、やはり自分の感覚の方が古いのだろうかと思うが・・・
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