プリン


SIGMA DP1Merrill

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知人の奥様が、成城石井でプリンを買ってきた。
台所に行ったら、買い物袋が置いてあった。
きっと食後に出るだろう・・と思いながら、知人は袋に人差し指を入れて、中を確認した。
プリンの容器が、ふたつ入っているのが見えた。

ひとつには、20%引きと書かれたシールが貼ってある。
もうひとつには、シールは貼られていない。
賞味期限が迫ったプリンを、値引いて売っているのだ。
値引いたプリンが、ひとつだけ残っていて、それを買ってきたのだろう。

夕食を終えると、冷蔵庫で冷やしてあったプリンが出てきた。
20%引きのシールが貼ってある方が、知人の前に置かれた。
男性である彼が、そういうものを片付けるのは、家族の中で暗黙の了解になっている。
何も言わず、それを手に取った。

ふたを取って、スプーンで食べる。
成城石井で売っているだけあり、さすがに美味しい。
「このプリンは、やっぱり美味しいね」
「そうね」
二人で椅子に座りながら、並んでプリンを食べた。

知人は、ちらりと奥様の方を見た。
テレビを見ながら、美味しそうに食べている。

「まさかシールをはがして、そっともうひとつの方に貼りかえたなんて、夢にも思うまい・・・」

知人は表情を見られたくなくて、窓の方に顔を向けた。
暗い外の景色を背景に、笑いをこらえる自分の顔が見えた。
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