沸騰


ひと気の無い家にひとり泊まると、寒くて仕方がない。
もともと寒い家であったが、住みやすいマンションと比べると、居心地に雲泥の差がある。
地面の冷気が伝わってくるようだし、安普請のため隙間風も吹く。

せめて暖かいコーヒーを飲める環境にしようと、ティファールの小さい電動ケトルを買ってきた。
丸一年使っていない水道の水も、そのまま飲むのは気持ちが悪いので、ブリタのポット型浄水器も購入、それらをがらんとした居間の中央にセットした。

水道の水をブリタの容器に流し込むと、ろ過されたきれいな水が下に落ちてくる。
一通り溜まったところで、それをティファールのケトルに入れて電源スイッチを入れる。
すると1、2分でぐつぐつと沸騰する音が聞こえ出し、カチッと音がして自動的にスイッチがオフになる。

なかなか調子がよろしい。
ひとり用として使うには丁度良い大きさである。
これでちょっと幸せな時間が過ごせそうだと思った時、とんでもないことに気付いた。

コーヒーがない。
お湯を沸かすことばかり考え、肝心のコーヒーを買ってくるのを忘れた。

お湯だけ飲むわけにもいかず、仕方なく沸いたお湯をただ見つめていた。
部屋の真ん中にぽつんと立つポット・・・そこからほんのりと湯気が上るのを見て、多少は暖が取れたかもしれない・・なんて考えた。

D3 + Nikkor ED 300mm F4.5
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