酔生夢死浪人日記

 日々、思いついたさまざまなことを気ままに綴っていく

リナレスまさかの転落~あまりに残酷なボクシングというゲーム

2009-10-12 03:51:22 | スポーツ
 オバマ大統領がノーベル平和賞を受賞した。「?」が正直な感想だが、「核なき世界」を本気で目指すなら、以下のことを求めたい。その一、米軍がイラクで使用した劣化ウラン弾が核兵器の一種であることを認め、全世界に謝罪する。その二、原爆症と似た病状に苦しむ全世界の被曝者のため、原発にストップを掛ける……。後付けでいいから、高邁な理想が空洞でないことを証明してほしい。

 音を消してCDを聴き、本を読みながらキリンカップを眺めていた。カメラが執拗にアップで追った〝BADBOYS〟本田と森本は、<フォロー&サポート>を重視する岡田監督の覚えが悪いという。南アはともかく、14年のブラジルW杯で毒の花を咲かせるだろう。

 8日夕、整骨院で肩凝りをほぐしてもらいながら、〝WOWOW宣伝員〟と化していた。
俺「あさって試合するホルヘ・リナレスは、日本のジムに所属したボクサーでは最強だよ」
院長「勇利アルバチャコフより?」
俺「勇利どころか、ファイティング原田より上だと思う」
院長「勝ちますか?」
俺「負けられない状況だからね。無料放送だから見れるよ」
 会話の後、暗い記憶が甦ってくる。

 俺は学生時代、日本ランキングを諳んじるほどのボクシングファンだった。後楽園ホールに頻繁に通ううち、世界を狙えそうな選手に注目するようになる。
 
 この試合をクリアすれば日本王座挑戦。しかも相手は噛ませ犬。ポイント差を広げた終盤、ロープに追い詰めた相手の捨て身のフックがアゴに炸裂し、ホープはリングで大の字になる……。数カ月後、リングに立った彼は、デジャヴのようにマットに沈んだ……。

 目を掛けた選手の多くが、似たようなパターンでグローブを置く。疫病神の自覚がある俺は、代々木第二体育館ではなく、テレビ桟敷でリナレスの試合を観戦することにした。
 
 ベネズエラ人のリナレスは帝拳で技術を磨き、世界に飛翔した。24歳の若さで2階級制覇(WBCフェザー級、Sフェザー級)と世界にその名を轟かせる。ゴールデンボーイ・プロモーション(デラホーヤ代表)との契約は、野球に例えればヤンキースの一員になるようなものだ。

 契約当日、リナレスは促されて壇上に立った。現地アメリカやスペイン語圏の記者を前に、リナレスは日本語で帝拳関係者への感謝を滔々と語り始めた。壇から降りようとすると笑いが起き、デラホーヤが「通訳を」と声を掛ける。

 上記の本田と森本、イチローと松井など世界で活躍するアスリートは少なくないが、リナレスの〝日本人度〟は誰より高い。端正な顔立ちに武士(もののふ)の風情が滲み、書道が趣味という。求道的でストイックな帝拳の雰囲気も大きいが、礼儀正しく謙虚な〝日本人〟になり過ぎたことが、今回はマイナスに作用したのではないか。

 2年8カ月ぶりかつ国内最終戦、凱旋でもあり輝かしい未来を祝福する壮行試合……パウンド・フォー・パウンド(階級を超えた最強ボクサー)に向けたステップとして絶対負けられない試合に向かうリナレスは、重圧のせいか普段より蒼白く見えた。ゴングが鳴って1分13秒後、悪い予感は的中する。俺だけでなく、日本中のボクシングファンは凍り付いて、言葉を失くしたはずだ。

 挫折を味わったゴールデンボーイ2世が、元祖ゴールデンボーイ(デラホーヤ)の下で再起し、ボクシングだけでなく失われた日本人の美徳をアピールしてくれることを願っている。



コメント (2)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする