酔生夢死浪人日記

 日々、思いついたさまざまなことを気ままに綴っていく

師走のスポーツ雑感~なでしこ、王さん、クラシコ、WWE

2011-12-13 21:08:30 | スポーツ
 別稿(2月25日)で<現時点で早くも個人的な'11ベストアルバムが決定した。アーティストとしての成熟を感じさせるPJハーヴェイの「レット・イングランド・シェイク」だ>と記した。NME誌が先日、同作を年間ベストアルバムに選出したのを知り、「五十路半ばでも、感性は衰えちゃいない」と自慢したくなった。

 2カ月前、自業自得でパソコンを壊した結果、生活がアナログになり、読書に割く時間が増えた。その分、スポーツへの関心が萎んだが、MVPを挙げるなら、なでしこジャパンだ。下馬評を覆して準々決勝でドイツを破った時点でヒートアップし、決勝は気合を入れて応援した。こまやかで和を貴び、粘り強いという大和撫子の美徳を体現していたことが、人気の最大の理由だろう。大会前はシビアな環境でプレーしていたことも、総下流社会で共感を得たはずだ。セルフプロデュースに長けた彼女たちは総じて魅力的だった。

 なでしこにとって、国民栄誉賞の先輩である王さんのドキュメンタリー「王貞治 走り続ける人生」が放映された。RKB制作ゆえ、王さんが福岡を新天地に選んでからに焦点を当てていた。10代の頃、沢村忠の真空飛び膝蹴りやビル・ロビンソンの人間風車に魅せられたが、最大のカタルシスは王さんのホームランだった。王さんが打席に入ると、息苦しいほどの緊張がラジオからでさえ伝わってくる。王さんは時を止める魔法使いだったのだ。

 世間のイメージは<長嶋さん=太陽、王さん=月>だが、俺の感じ方は違う。王さんは国籍から家族、少年時代のエピソードまで語り尽くされているが、長嶋さんの生い立ちは対照的に、読売が隠したかと勘繰りたくなるほど明かされていない。長嶋さんは<読売の囚われ人>として野球人生を終えるが、王さんは巨人を離れることで自由の翼を得た。中内功、孫正義という怪物と交友することで、スケールを増したのではないか。

 <王さんと会って好きにならない人はいない。いろんなことを経験し、いろんな色を吸収すると濁っていくはずなのに、ここまでもと思うぐらい白に近い>(論旨)

 番組で改めて実感したのは、イチローの直観力と表現力だ。王さんの開放的な性格、人をランク付けしない目線を絶賛し、上記のように語っていた。ダイエー監督就任後、辛酸を舐めたことで心が濾過され、情熱と恬淡を併せ持つ境地に達したのだろう。王さんに理想の老い方を教えてもらった。

 クラシコは予想外の結末だった。有利とみられたレアル・マドリードが、バルセロナのGKバルデスのミスで先制点を挙げる。前半はペースを掴んでいたが、次第に防御網を食い破られて3失点。珍しく沈黙を守って試合に臨んだモウリーニョの傷心はいかばかりか。〝世界一の名将〟が年下のグアルディオラに煮え湯をのまされ続ければ、冠まで奪われる可能性がある。

 監督(ヘッドコーチ)のタイプは様々だ。NFLでは戦術から選手、スタッフまでチームを自分色に染めるタイプが多いが、モウリーニョは故仰木彬氏に近く、素材を生かしてまとめていく。チェルシーではスピードある攻守の切り替えでプレミア全体の質を変え、インテルではセリアAに合った抑制の取れたチームをつくった。

 モウリーニョがレアル監督に就任した際、<神話崩壊>を予感した。メッシを軸にしたバルサの流れるサッカーに対抗するためには、クリスチャーノ・ロナウドではなく、ピッチを駆け回るルーニーが必要だと思う。リーガとCLでともに優勝を逃したら、ルーニー移籍でチェルシーのダイナミズム再現を目指すかもしれない。

 WWEで今年、一気にポジションを上げたのはCMパンクだが、個人的なMVPはアルベルト・デル・リオだ。ドスカラスの息子でアマレス(五輪代表)、格闘技路線で名を馳せてからプロレス入りした。グラウンド技、間接技と引き出しが多く、初めてプロレスを見た頃(1960年代半ば)の外国人レスラーの佇まいを備えている。体格に恵まれ、エンターテインメントを弁えた完全無欠のヒールだ。

 プロレス史上最大の事件というべき「シナ問題」は混迷の度合いを増している。〝完璧なベビーフェース〟としてプッシュしたシナが、激しいブーイングを浴びるようになる。ストーリーラインに手を尽くしても逆効果だ。<不良っぽいが、先生たちと仲良しで成績もいい>というシナのキャラは、コアなファン(15~25歳の男)に絶対受けない。シナの敵役と位置付けられたオートンやCMパンクが、今や大声援を浴びている。

 このままではシナも不幸だし、ヒールターンすべきと考えるが、映画やCMの絡みもあって難しいのだろう。WWEがファンを簡単に操れる時代は終わった。「シナ問題」をどう解決するのかを楽しみに、来年もWWEを見続けることになりそうだ。


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