酔生夢死浪人日記

 日々、思いついたさまざまなことを気ままに綴っていく

年頭の抱負~格好悪くはみ出して空気を変える

2015-01-03 23:50:28 | 戯れ言
 年末年始は京都に帰り、親戚の寺に泊まって、母が暮らす施設を訪ねる。ところが今年は、インフルエンザの流行で面会禁止の処置が取られ、玄関口でしか会えない。幸い出るのは自由だったので、母が親戚宅に足を運び、俺とだけでなく、同い年で共通の知人が多い叔母を交えて歓談することになった。

 従兄弟も俺も紅白歌合戦に興味がないので、大晦日はチャンネルを偶然合わせた「ダイナマイトどんどん」(78年)を見た。従兄弟は自民党の元国会議員だが、現在はフリーハンドで環境保護、フィリピンの貧困救済に取り組んでおり、同作で主演を務めた菅原文太に絶大な敬意を抱いている。

 「おまえが会員になってる党(緑の党)は、考えが近い文太みたいな人をトップに据えたら、知名度が上がるのに」と従兄弟は話していた。〝政治のプロ〟の意見だが、政治にはイメージ戦略が必要と言いたかったのだろう。安倍政権を批判した紅白でのサザンのパフォーマンスが話題になっていることを、帰京してから知った。

 30、31日は暖かかったが、年が明けて急激に寒くなる。3日は雪で山陰線、新幹線とも遅れたが、鈴本演芸場初席第三部に辛うじて間に合った。顔見せ興行で各自の持ち時間は短いが、落語は柳亭左龍、桃月庵白酒、柳亭燕路、柳家権太楼、柳家小三治、柳家喬太郎、柳亭市馬の目も眩むようなラインアップで、漫才、奇術、講談、粋曲、寿獅子、紙切りの匠の芸も併せて堪能する。

 トリを務めたのは昨年、小三治から栄えある座を禅譲された愛弟子の柳家三三で、「粗忽の釘」を飄々と演じていた。笑う門には福来るというが、2015年は上々の滑り出しだった。

 
 年頭に当ブログで抱負を記すことが習慣になっている。今年は未年だが、羊のようにおとなしくせず、格好悪くはみ出したい。「いつも格好悪いくせに何を今更」とツッコミを入れられそうだが、俺のいう〝格好悪い〟とは、文太のように旗幟を鮮明にすることだ。

 「寄らば大樹の陰」、「長いものに巻かれろ」が日本人の好みだが、ここ数年、その傾向は強まるばかりだ。バンドが反原発をMCで訴えただけで、バッシングの書き込みが殺到するが、飼い慣らされているのは若者だけではない。立ち位置を明確にすると、「待ってました」とばかり嗤いの対象にする〝中立の物知り〟が、この国の保守化、集団化を支えている。

 昨年暮れに紹介した柳家小三治と中村文則は、政治的メッセージを前面に出すタイプではないが、時の流れに異議を唱えた。紅白のサザンも同様で、現在の風潮からすれば<格好悪い>といえる。だが、台湾、香港、そしてスコットランドでは日本とムードが真逆だ。<沈黙=格好悪い>で、若者たちは自身の思いを鮮やかに示していた。

 日本を閉塞社会にした責任は俺たち中高年世代にある。そのことを肝に銘じ、意識的に格好悪く生きて、<はみ出すこと=格好いい>と空気を変えるために微力ながら貢献したい。
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