酔生夢死浪人日記

 日々、思いついたさまざまなことを気ままに綴っていく

還暦男の横恋慕~アーモンドアイに愛は届くか

2018-11-24 19:50:07 | 競馬
 ゴーン問題の余波は収まりそうにない。強欲ぶりを伝える日本メディアと対照的に、欧州メディアは擁護に回り、英フィナンシャルタイムズは「ゴーンはハメられた」といった論調だ。フランスでは「経済事案の容疑者を勾留するのは異常」と日本の司法制度を疑問視する報道もある。

 切り口は様々だが、この件について感じていることを次稿の枕で記すつもりでいる。キーワードは<普遍性と特異性>だ。フランス側の交渉を受け持つ経済相の名にビビッとくる。JRA移籍後、すっかり日本に馴染んだフランス人騎手と同じ名前だ。

 国立新美術館で「生誕110年~東山魁夷展」を鑑賞した。チラシに記された<情感にみちた静謐な風景画>のみインプットして会場入りするや、魁夷の世界が感応し、皮膚の内側に染み込んできた。<風景画≒リアリティー>と考えていたが、東山は風景を心の裡にいったん閉じ込め、濾過した後、キャンバスに向かったように思える。

 <リアルとシュールの境界に聳える蜃気楼>が俺の感想だ。人の姿は一枚のみ、それも窓際に佇む頭だった。描き込んだ人と自身の主観が交錯することを、忌避したのかもしれない。それによって、作意が鑑賞する側に直に伝わってくる。白馬をモチーフにした連作(1972年)について東山は、<白馬は祈りの表現>と語っていたという。

 美術館を出て六本木を歩いていると、ミッドタウン周辺に人だかりが出来ていた。恒例のクリスマスイルミネーションだが、幽玄の極致を堪能した後だけに感興は覚えなかった。東山の崇高さと無縁な俺も、実は一頭の馬に祈りに似た思いを寄せている。

 ジャパンカップの枠順が確定し、1番人気確実のアーモンドアイが1枠①番に入った。鞍上は上記のルメールで、日仏友好の象徴といえるコンビだ。惨敗でもしたら、両国の軋みの始まりなんて声が上がりそうだ。最内枠は追い込み馬に不利だし、ルメールも53㌔への減量は大変だろう。古馬との初対戦、父ロードカナロアの距離の壁と、中穴党にとって消す材料は揃っているが、俺はひたすらアーモンドアイの勝利を願っている。

 理由は簡単、ペーパーオーナーゲーム(POG)の指名馬だからである。POGは競馬を楽しむ最高のツールだが、陥穽もある。ギャンブルに愛情の要素が加わるからだ。幾許かのやりとりがあるから愛は欲とリンクしている。愛が試されるのはゲームの期間(俺のグループはダービー以降もGⅠのみ適用)が終わってからだ。

 アーモンドアイのみならず、POGで人気薄だった昨年の指名馬、ダノンプレミアム、タワーオブロンドン、エタリオウが好結果を残してくれた。〝いいことは続かない〟という人生訓から、今年は方針を変え、有力厩舎が管理する良血馬を多く選んだが、現状はイマイチだ。

 凱旋門賞とBCターフを連勝したエネイブル、さらにウィンクス、アルファセントーリと牝馬が世界の競馬界を席巻している。アーモンドアイがJCを制し、凱旋門賞へ……なんて夢は見ていない。一戦必勝タイプの同馬の海外遠征は難しいと思う。シルクレーシング(馬主)もノーザンファーム(生産者)も繁殖入りまで射程に入れ、冒険はしないはずだ。

 中央登録を抹消され、地方で細々と走っているかつての指名馬のその後も気になる。牝馬には繁殖入りの目もあるが、消息不明になった牡馬の多くは馬肉になっているはずだ。勝ち目は全くない馬の単勝馬券を、愛ゆえ買うこともたびたびだ。

 転落馬の筆頭がティルナローグ(騸、6歳)だ。新馬→500万下を圧勝し、ダービー候補と目される。通過点のはずの京都2歳Sで圧倒的1番人気に推されたが7着惨敗。その後は1勝のみで4年後の今、1200~1400㍍を中心に使われている。人気薄だからオッズもつく。素質馬はなぜ、復調しなかったのか気になっている。

 俺は常々、格差と貧困の是正こそ最重要の課題と記している。だが、世間に先んじて格差社会になったのは競馬界で、今じゃ社台系の独裁だ。情や絆が入り込む余地は少ない冷酷な仕組みで、明らかに普段の俺の言動と矛盾している。言い訳っぽいが、愛を育むPOGに参加している限り、競馬から離れられないだろう。
コメント
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