酔生夢死浪人日記

 日々、思いついたさまざまなことを気ままに綴っていく

間近に迫った都知事選~闘いの後の地殻変動に希望を込めて

2014-02-07 15:31:19 | 社会、政治
 都知事選の投開票が2日後に迫った。舛添候補圧勝、細川、宇都宮候補が2位争いという流れは、最新の世論調査(東京新聞)でも変わらない。細川候補を応援する天木直人氏は「立場を明確しない脱原発派が一番卑怯」とブログに記していた。俺はかねて宇都宮支持を明言している。理由を以下に記したい。

 まずは<義と情>だ。「このままいけばホームレス」……。フリーになったはいいが、能力に欠けるキリギリスゆえ、俺はこんな不安に怯えていた、お世話になりたい、そして活動の一翼を担いたいと、宇都宮健児氏が代表を務める反貧困ネットワークの一員になる。〝悪運〟がセーフティーネットになって自身の状況は好転したが、送られてくるDVDや資料でシビアな現実に触れ、<貧困と格差>こそ社会を測る第一の物差しであると確信した。

 昨年6月末、反貧困ネットワーク主催の集会に参加した。〝参院選直前、各党に貧困問題を問う〟という趣旨で、自公以外の著名議員が壇上に顔を揃えていた。俺はその場で、ひとり無名の高坂勝氏(緑の党共同代表)に衝撃を受ける。哲学が滲み出る発言が各党の論客を凌駕していたからだ。そして本番では、同党候補の三宅洋平氏が「選挙フェス」で一大旋風を巻き起こす。静と動のコントラストが際立つ同党は、もちろん宇都宮氏を推薦している。

 調和と多様性を掲げる緑の党に重なるのは、池澤夏樹や星野智幸が志向する<浸潤するアイデンティティー>と<柔軟なオルタナティヴ>だ。ちょっぴりファジーな点も気に入っている。〝アイデンティティー拒否症〟の俺だが同党に入会し、脱原発陣営の亀裂修復に動きだした三宅氏らを支えたいと考えている。

 次は<知と理>だ。脱原発に限らず様々な運動に関わってきた方々が分裂している現状で、俺の発言など〝重さゼロ〟であることは承知している。ゆえに〝虎の威〟を借り、感銘を受けた二人の言葉を紹介したい。まずは小出裕章氏だ。

 <私の戦いは「原子力マフィア」と呼ぶ強大な権力が相手でしたので、常に敗北でした。それでも、負けても負けてもやらなければいけない戦いはあると、今でもそう思います。歴史は大きな流れですので、目の前の小さな勝ちを得るためではなく、遠い未来から見ても恥ずかしくない戦いをするべきだと思ってきました。私が原子力に反対するのは、単に原子力が危険を抱えているからではなく、それが社会的な弱者の犠牲の上にしか成り立たないからです。当然、戦争の問題、沖縄の問題など、無数に存在している課題と通底しています>(一部省略)

 星野智幸のブログは長文なので、肝と感じた部分の要旨を記す。

 <生命を維持しているだけとしか言いようがない若者の貧困、孤立する高齢者の一人暮らしや夫婦等々、今この一瞬が死活問題として、生死の瀬戸際に立たされている人がたくさんおり、福祉が都知事選で最も重要な課題となっている。ヘイトスピーチという差別と暴力が顕在化しているのは主に東京と大阪で、東京都にはこの問題を、地域として対処する使命がある。原発の問題はこれらと並ぶ重要な政策だが、「並ぶ」のであって優先されるべきではない。いずれも人の生命がかかった同じ重さの課題だ。脱原発を実現するために、貧困で生死の瀬戸際にいる人は我慢してくださいとは絶対言えない。これを言える人、あるいは考えないでいられる人は、ヘイトスピーチについて語る資格はないとさえ思う>(抜粋)

 宇都宮支持者の多くは、原発が他の課題――護憲、反戦、貧困、差別etc――と通底していると考えている。沖縄では全自治体が反対決議をし、多くの県民が抗議活動を繰り広げても、オスプレイは配備され、辺野古移設は強行される。原発も同様で、<地殻変動(≒革命)>を起こすまで、この先も長く厳しい闘いが続くはずだ。

 <細川=小泉>、<宇都宮=共産党>と図式的に決めつけ、後者を材料にそれぞれの候補を叩く報道も目立ったが、舛添候補を利する露骨な世論操作だ。憲法やアジア観、社会保障、志向するライフスタイルで、細川氏と小泉氏の間に大きな隔たりがある。一方の宇都宮氏は、前回の選挙時(一昨年12月)、共産党系の選対入りを拒み、軋轢が生じた。同氏が関わる反差別法、脱原発法の賛同者に共産党議員が一人もいないことが、両者の距離を物語っている。

 小泉氏には「ファルージャ~イラク戦争 日本人人質事件……そして」(13年)を見てほしい。小泉首相時代、日本は米国債(30兆円)を買い、イラク戦争の戦費を調達した。小泉氏はファルージャ攻撃も支持したが、米軍が用いた劣化ウラン弾(第2の核兵器)により、同地では先天異常を持って生まれる子供が後を絶たない。子供たちの姿に俺は、<自衛隊派遣に反対なのに黙認した罪、侵攻がもたらした惨禍を知らなかった無知の罪>が形になっていると別稿に記した。原発と放射能の危険、命の尊厳を説く小泉氏には、主導した戦争がもたらした事態を直視し、その上で今後も各首長選で、脱原発候補を応援してほしい。

 脱原発状態で各企業が莫大な利益を挙げている今こそ、<廃原発>をメーンに掲げるべきだ。広瀬氏は早くから集会や講演会で<廃炉こそ最大のテーマで、東電や融資する銀行を潰すことが目的ではない。そのためには電気代値上げを許容する必要がある>と説いてきた。

 広瀬氏の見解にリアリティーを覚えつつ、ルビコン川を渡ったという印象を受けた。<地殻変動>が起きなくても、東電と銀行の破綻が回避され、政官財の利権構造が維持されるなら、自民党政権下でも脱原発が可能……。そんな道筋が見えてきたからで、小泉氏も同様の視点で安倍首相に方向転換を求めた。<公的な機関が主体になって廃炉を実行するべき>というみんなの党の主張――もちろん財源は国民の負担増――を受け入れ、安倍政権が与党再編に着手したら……。考えているうち混乱してきたが、仮定の話だからここで止めておく。

 民主党が圧勝した衆院選直前(09年)の空気を、俺は<不気味なほど静かな革命>とブログで表現した。当時と比べ、今回の都知事選の方がはるかに騒々しい。<細川―小泉タッグ>は1万人規模の聴衆を集め、南米に端を発した直接民主主義の流れに連なっている。一方の宇都宮陣営には、ロッカー、ラッパー、イラストレーター、役者らが集い、若い世代や女性が個性的な表現で支持を訴えている。両方の力が結集すれば、脱原発の願いは燎原の火の如く、津々浦々に広がっていくだろう。
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