酔生夢死浪人日記

 日々、思いついたさまざまなことを気ままに綴っていく

原点とは、立脚すべき地点とは~「ゼロ・グラビティ」が問い掛けるもの

2014-01-17 16:29:35 | 映画、ドラマ
 「SIGHT」、「週刊金曜日」とともにリベラル、ラディカル御用達「DAYS JAPAN」の新編集長が決まった。公募で選ばれた丸井春さん(31歳)である。特定秘密保護法成立により取材はさらに厳しくなるだろうが、同誌の更なる奮闘を期待したい。

 上記3誌を愛読する全共闘世代の知人がいる。反原発デモに長年参加し、反秘密保護法、普天間基地移設反対、ヘイトスピーチへのカウンターと常に声を上げている。彼の好きな言葉は<原点>で、谷川雁に影響を受けたオールドレフトだ。「都知事選は誰に投票する?」と尋ねられ、「義と情で宇都宮氏に投票する」とメールを返信した。俺は反貧困ネットワーク(宇都宮健児代表)の一員で、当ブログで記したように、高坂勝、三宅洋平両氏にインパクトを受け緑の党入会を考えている。〝変節〟は言霊が許さない。

 知と理で勝負する識者の多くは、脱原発派が一本化するべきと唱えている。別稿(1月8日)で紹介した天木直人氏もそのひとりで、<細川―小泉連合>への熱狂に違和感を覚えるほどだ。宇都宮氏が降り、細川勝利の暁に副知事就任というプランもあったらしいが、仕事先の夕刊紙は既に「細川勝勢」と報じた。情勢分析が正しければ、一本化も不要になる。小泉氏が切り捨てた人たちに手を差し伸べてきた宇都宮氏を、〝細川知事〟が重用するはずもないからだ。

 新宿で先日、宇宙を舞台にした「ゼロ・グラビティ」(13年、アルファンソ・キュアロン監督)を見た。原題は“Gravity”、即ち「重力」である。ストーリーは至ってシンプルだが、立体感、浮遊感、孤独、絶望、再生を3Dで体感出来る奥深いエンターテインメントだ。顔の映るキャストはライアン・ストーン博士(サンドラ・ブロック)、マット・コワルスキー飛行士(ジョージ・クルーニー)の2人だけである。

 ルーチンワークの作業中、アクシデントで大混乱に陥る。ロシアが自国のスパイ衛星を破壊した際に生じた破片が他国の衛星と衝突し、ライアン、マット、シャリフが乗り込むスペースシャトルも被害を受ける。シャリフは死亡し、ライアンとマットは機外に放り出された。

 地上との交信は途絶え、知力と人格が試される展開になる。開放的でお喋りのマットは今回が最後、無口のライアンにとっては初めての宇宙飛行だ。マットは妻に逃げられた思い出を面白おかしく話し、ライアンは亡くした娘の思い出に囚われている。対照的な2人だが、危機に直面して協力するうち打ち解けていく。人間性そのものが試される状況でマットは犠牲的精神を発揮し、離れ離れになりながらもライアンを勇気づける。

 発端になったのはロシアのミスだが、地上はともかく宇宙では、米露中は友好な関係を保っているという設定だ。神からの啓示を受けたと感じ、その後の人生を信仰に捧げる宇宙飛行士も多いが、ライアンもまた、それが臨死体験なのか、夢なのか、幻想かはともかく、神秘的な体験をする。遥か彼方(死後の世界)に赴いたはずのマットが現れ、ライアンにアドバイスするシーンが印象的だった。

 おまえにとって原点とは、立脚すべき地点とは、守るべきものは……。ライアンが地面を踏みしめるラストシーンは、様々なことを俺に問い掛けてくる。前稿で紹介した「キャプテン・フィリップス」には入り込めなかったが、「ゼロ・グラビティ」はフワフワしがちな俺の心に錨を下ろす作品だった。

 公開直前はゼロ対決が話題になったが、興行的には「永遠の0」が圧勝したようだ。母が原作を酷評したことは別稿(1月2日)に記した。頑迷?な保守派の母がボロクソに言うぐらいだからリベラル寄りの作品と誤解していたが、原作者の百田尚樹は安倍応援団の右派だと最近知った。母は一体、何が気に入らなかったのだろう。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする