昨日(1日)、将棋のA級順位戦が一斉に行われ、羽生2冠が8連勝で名人挑戦権を獲得した。「将棋界で一番長い日」(3月2日)の注目は降級争いのみと、興趣が削がれた感が強い。
最終局を待たず勝ち越しを決めた屋敷9段の健闘は見事だった。史上最年少でタイトル獲得した〝お化け屋敷〟だが、順位戦で停滞し、昨年ようやくA級入りを果たした。「一切勉強しない」との発言は、無頼派のイメージを守るためのポーズだったのか。研究を積み重ねたからこそ、40歳で再度ピークを迎えることが出来たのだ。
3・11以前は公にされなかった<地震発生確率>が、毎日のように報じられている。異なる数字を集約すれば、<首都圏で4年以内に直下型地震が起きる確率は70%>となる。マスメディアは終末を予言するカルト教団の機関紙のようだ。放射能汚染と地震に先行し、崩壊は既に、個人の精神や生活に染み込んでいる。
俺はスーパー、コンビニ、100円ショップの密集地帯に住んでいる。どの店も入りは悪く、夕方でもレジで長く待たされるケースは少ない。明るい店内、愛想のいい笑顔、そして大量に余る商品は、被災地の窮状や世界の飢餓とどう繋がっているのだろう。ありふれた日常の光景に狂いと軋みを覚えるのは、俺自身の内面の崩壊、そして肉体の老いのせいなのか……。
「ミッション・インポッシブル~ゴースト・プロトコル」(11年、ブラッド・バード監督)が、悪い予感をしばし忘れさせてくれた。第1作でフェルプス(TVシリーズ「スパイ大作戦」のリーダー)を裏切り者に仕立てたことに憤りを覚え、二度と見ないと決めていたが、封印を解いた。第4作は「ダイ・ハード」と「スピード」に匹敵する爽快なエンターテインメントである。
古今東西、映画で走る男を挙げればきりがない。まず思い浮かぶのは「フレンチ・コネクション」のジーン・ハックマン、そして「卒業」のダスティン・ホフマンか。ナ・ホンジン監督作ではハ・ジョンウとキム・ユンソクが野獣のように闇を駆け抜けていたが、本作のトム・クルーズは、知性と野性を併せ持つランナーだった。ハイテクを前面に押し出した本作だが、息遣いと鼓動がビートを刻み、飛び散らんばかりの汗がスクリーンを濡らしていた。
ロシア、ハンガリー、ドバイ、インド、ラストのアメリカへと場面を移しつつ、複数の糸が一本に収斂していく。ユーモアとチームスピリットも織り込まれていた。核戦争をテーマにした本作には、広島と長崎も台詞に登場する。唯一の被爆国日本もまた、陰の舞台と考えていい。「スパイ大作戦」から核を扱ったエピソードをピックアップし、参考にしたことが窺える。
「スパイ大作戦」を彷彿させたのが、ドバイでの客室入れ替えだ。テレビシリーズでIT部門を任されていたバーニーばりの作戦だが、コンピューターや科学装置を用いるという発想が当時の敵になく、IMFチームの圧勝に終わるケースが多かった。俺は10年ほど前、「スパイ大作戦」の全171エピソード(1966~73年)をスカパーで見た。後半に進むにつれ、アメリカの国策に沿ったストーリーが増えていくことに気付く。
中南米のとある国、革命で権力を握った指導者は、危険な武器を輸入して自由主義国家を脅かしたり、独裁で民衆を苦しめたりする。もっともらしい理想を説く指導者の風貌は、ゲバラやカストロに似ていた……。フェルプス(ピーター・グレイブス)らは現地に飛び、ミッションを実行する。「スパイ大作戦」にとって、ドラマを通しての洗脳もミッションの一つだったのだろう。
世界中でヒットするためには、独り善がりは禁物だ。細部まで計算され尽くされた本作は、人間の感情や心理に至るまで破綻がなく、結果としてグローバルな普遍性を獲得している。グローバリズムもこんな形なら、もちろんOKだ。
最終局を待たず勝ち越しを決めた屋敷9段の健闘は見事だった。史上最年少でタイトル獲得した〝お化け屋敷〟だが、順位戦で停滞し、昨年ようやくA級入りを果たした。「一切勉強しない」との発言は、無頼派のイメージを守るためのポーズだったのか。研究を積み重ねたからこそ、40歳で再度ピークを迎えることが出来たのだ。
3・11以前は公にされなかった<地震発生確率>が、毎日のように報じられている。異なる数字を集約すれば、<首都圏で4年以内に直下型地震が起きる確率は70%>となる。マスメディアは終末を予言するカルト教団の機関紙のようだ。放射能汚染と地震に先行し、崩壊は既に、個人の精神や生活に染み込んでいる。
俺はスーパー、コンビニ、100円ショップの密集地帯に住んでいる。どの店も入りは悪く、夕方でもレジで長く待たされるケースは少ない。明るい店内、愛想のいい笑顔、そして大量に余る商品は、被災地の窮状や世界の飢餓とどう繋がっているのだろう。ありふれた日常の光景に狂いと軋みを覚えるのは、俺自身の内面の崩壊、そして肉体の老いのせいなのか……。
「ミッション・インポッシブル~ゴースト・プロトコル」(11年、ブラッド・バード監督)が、悪い予感をしばし忘れさせてくれた。第1作でフェルプス(TVシリーズ「スパイ大作戦」のリーダー)を裏切り者に仕立てたことに憤りを覚え、二度と見ないと決めていたが、封印を解いた。第4作は「ダイ・ハード」と「スピード」に匹敵する爽快なエンターテインメントである。
古今東西、映画で走る男を挙げればきりがない。まず思い浮かぶのは「フレンチ・コネクション」のジーン・ハックマン、そして「卒業」のダスティン・ホフマンか。ナ・ホンジン監督作ではハ・ジョンウとキム・ユンソクが野獣のように闇を駆け抜けていたが、本作のトム・クルーズは、知性と野性を併せ持つランナーだった。ハイテクを前面に押し出した本作だが、息遣いと鼓動がビートを刻み、飛び散らんばかりの汗がスクリーンを濡らしていた。
ロシア、ハンガリー、ドバイ、インド、ラストのアメリカへと場面を移しつつ、複数の糸が一本に収斂していく。ユーモアとチームスピリットも織り込まれていた。核戦争をテーマにした本作には、広島と長崎も台詞に登場する。唯一の被爆国日本もまた、陰の舞台と考えていい。「スパイ大作戦」から核を扱ったエピソードをピックアップし、参考にしたことが窺える。
「スパイ大作戦」を彷彿させたのが、ドバイでの客室入れ替えだ。テレビシリーズでIT部門を任されていたバーニーばりの作戦だが、コンピューターや科学装置を用いるという発想が当時の敵になく、IMFチームの圧勝に終わるケースが多かった。俺は10年ほど前、「スパイ大作戦」の全171エピソード(1966~73年)をスカパーで見た。後半に進むにつれ、アメリカの国策に沿ったストーリーが増えていくことに気付く。
中南米のとある国、革命で権力を握った指導者は、危険な武器を輸入して自由主義国家を脅かしたり、独裁で民衆を苦しめたりする。もっともらしい理想を説く指導者の風貌は、ゲバラやカストロに似ていた……。フェルプス(ピーター・グレイブス)らは現地に飛び、ミッションを実行する。「スパイ大作戦」にとって、ドラマを通しての洗脳もミッションの一つだったのだろう。
世界中でヒットするためには、独り善がりは禁物だ。細部まで計算され尽くされた本作は、人間の感情や心理に至るまで破綻がなく、結果としてグローバルな普遍性を獲得している。グローバリズムもこんな形なら、もちろんOKだ。