酔生夢死浪人日記

 日々、思いついたさまざまなことを気ままに綴っていく

あまりにアメリカ的な……~NFLに浸る日々

2005-11-09 11:40:50 | スポーツ

 昨年の大統領選挙で浮き彫りになったのは、アメリカが二つの顔を持つことだ。官製キリスト教を信じる保守派、NYやLAに生息するリベラル……。志向が180度異なる層を繋ぎ留めるのは簡単ではないはずだが、道具立てとして用意されたのが、スポーツを含めたエンターテインメントだと思う。

 中でも巨大なのがNFLだ。ブツブツとアメリカ批判を繰り返す俺だが、今はどっぷり「アメリカ的」に漬かっている。アメフトは面白さを至上命題に作り上げられたスポーツで、理性と獣性を引き出す「仮想戦争」でもある。見る側は局面ごとに推理を楽しみ、自らの勘を確かめる。ドンデン返しが繰り返され、気まぐれな女神は謎めいた笑みを絶やさない。ミステリーとギャンブルの色が濃い人生ドラマで、勝者と敗者の明暗は残酷なまでに目蓋に刻まれる。

 ここ数年、さまざまな因縁がスケジュールに織り込まれるようになった。露骨なまでストーリー作りに、WWEの感化を揶揄する記者もいるほどだ。とまれ、リーグ挙げてエンターテインメントを追求する姿勢は一貫している。NFLの人気はネットワークが支払う放映権料に表れている。今季は2500億円前後だが、来季以降は4400億円に跳ね上がるという。試合数は年間268だから、一試合につき16億円超である。MLBが年間500億円前後だから、人気を同列に論じられない。ちなみに、ドイツW杯で日本が払う放映権料は250億円、北京五輪は200億円である。

 NFLで特筆すべきは、公平の原則が貫かれている点だ。放映権料、入場料収入、スポンサー料が32チームに均等に分配される。完全ウエーバー制によるドラフト、サラリーキャップ制で、戦力均衡が実現したが、来季終了後、雲行きが怪しくなってきた。新協約締結のため交渉の席に着く選手会は、人気に見合った年俸をオーナー側に求める見通しで、サラリーキャップ廃止も視野に入れている。事実、NFLの平均年俸は1億3000万円前後と、MLBと比べ格安なのだ。松井の来季年俸は12億円前後と予測されているが、名の通ったNFLの選手の多くは10億円に届かない。A・ロドリゲスが30億円台なら、トム・ブレイディ、ペイトン・マニング、ドノバン・マグナブらスーパーQBの価値は100億円を下らないのではないか。

 日米のプロ野球、欧州サッカーで金満チームが選手を掻き集めるのと好対照に、NFLではチームのファンダメンタルが近似的である。だからこそ、ヘッドコーチとQBの差が勝敗に表れるのだ。ヘッドコーチとQBに求められるのは、明晰な頭脳、統率力、不眠不休で取り組む情熱、瞬時の判断力、勇気といったところか。さらにヘッドコーチには育成能力、QBには頑強な肉体が求められる。すべてを持ち合わせていても、スーパーボウルに勝てるとは限らない。

 全米中の耳目を集めた第9週のマンデーナイトで、コルツが宿敵ペイトリオッツを40対21で下し、今季負けなしの8連勝となった。4勝4敗になったペイトリオッツだが、奇跡のV3が潰えたわけではない。ライバル視されていたジェッツがケガ人続出で低迷しており、地区Vは堅そうだ。別稿(9月6日)で、理想のスーパーボウルはコルツVSパンサーズと書いたが、今のところ順調に推移している。

 アメリカではフットボールシーズン中、孤閨をかこつ女性たちを「フットボール・ウイドー」(フットボールの未亡人)と呼ぶが、俺なぞさしずめ「フットボール・バチェラー」(フットボール好きの男やもめ)といったところか。スーパーボウルまで3カ月、NFLをたっぷり満喫したい。

<追記> 更新した後、衝撃の場面を目にした。昨夜録画していたチーフス対レイダーズの結末に度肝を抜かれた。チーフスのヴァーミール・ヘッドコーチの決断は、後々まで語り草になるだろう。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする