友人のお姑さんが上梓されたが50年前の歌集を、借りて読みました。岐阜女子師範を出られて、長く教師をされていた秋山さんの「風のことば」。6人のお子さんを育てられ、お子さんの歌や、当時住まわれていた可児市から見た白山の歌など、平穏な暮らしが詠みこまれていて、時代を感じさせません。
彼女のお父上もお祖父さまも短歌を詠まれていて、もう13歳に最初の歌を作られていました。抜群の環境でした。5首目の歌は、昭和30年の作。今年は原爆70年目。この時は10年目でした。
序文は、なんと塩田良平先生。55年前、大学受験講座(現代文) でよくラジオからお声が流れていました。先生の写真は、いつも和服姿。あのなつかしいお顔を久しぶりに思い出しました。
冬深き木曽の流れの岩垣に湛へし水はきびしくし
十七となりしわが子父と並び坐れる肩は父より逞し
あの山が加賀の白山と通るたび遠き思ひに立つ坂の上
春もなほ鈍きひかりの雪かづく白山はわが寂しさの涯(はて)
十年経し今日広島に鳴る鐘のひびきさながら身に伝ひくる
若葉燻(くゆ)らす新月淡しこの月の満つる日に娘は嫁ぎゆくなり
寄りがたく遠きにありて白山の稜線はわが胸に傾く
塩田良平先生の序
見返し裏の挿絵