岐阜県歌人クラブの岸孝子さんから、歌集「雪明り」が贈呈されてきました。御年94歳の現役歌人です。面識はありませんが、いつも歌人クラブ紙上で作品は拝見しています。つい先ごろまで一人暮らしでしたが、最近娘さんと同居されるようになったと、作品から推察できました。どれも捨てがたい知的な作品ばかり。その中で好きな作品を選んでみました。五首目の追悼歌は妹さんを見送られたときのもの。
現代かな遣いを通しておられますが、タイトルの「雪明り」も、現代用いられているように、「雪明かり」とすべきですが、季語の「雪明り」とした、と断られています。
停電の夜の北斗に滴れる光を見しと被災地便り
葬送に手向けられしか天空に色くっきりと虹かかりたり
いっせいに白と変れる制服に今朝の空気の改まりたり
方丈記の音読に声つまりたり被災模様の昔も今も
終の化粧をわずかにこぼるる白き歯に在りしながらの笑顔が覗く
大正、昭和、平成、令和とよくぞまあ幾世代経て今あるいのち
身をひそめやりすごすより術なきかコロナコロナの暗転世界