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午後からOCRに終始

かなり、大きなもののOCRを午後から行っていた。『近現代中国政治史』、『文明と戦争』、『インド洋圏が、世界を動かす』、『ゲームの力が会社を変える』です。

これらを消化するにはかなりの体力が必要です。
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図書館の主たる機能は、楽しみのための図書貸出

『図書館の基本を求めて』より アメリカの図書館を見る視点

ジョージ・ボビンスキー著『図書館と図書館職 挑戦と変革の60年 1945-2005年』に、アメリカの公立図書館について、次のような一節がある。

「二〇世紀中葉の「公立図書館調査」で、蔵書の一〇パーセントがすべての利用の九〇パーセントを賄っていることがわかった。調査はまた、利用者の六〇パーセントが楽しみのための読書--主としてフィクション--のために来館していることを発見した。これは五〇年後でも同様である」。

キャサリン・シェルドリック・ロスほか著『読書と読者 読書、図書館、コミュニティについての研究成果』でも、この「公立図書館調査」についてより詳しく、「フィクションが貸出全体の六〇パーセントから六五パーセントを占め、最も大規模な館では約五〇パーセントか五〇パーセント弱、最も小規模な館では約七五パーセントである」と記し、さらに、一九八二年に発表されたイギリスの一三四の図書館の貸出を調査した結果として、成人フィクションが五九・九パーセント、成人ノンフィクションが二二パーセント、児童書一八パーセントだったこと、二〇〇一年のアメリカの三つの州の調査では、公立図書館の貸出の六〇~七〇パーセントがフィクションであること、さらにオーストラリアの調査でも同じ傾向にあることなどを紹介し、次のように続ける。「要するに、公立図書館の主たる機能は余暇の読書のための図書貸出にあり、常にそうであった。この事実を恥じるべき秘密として扱うのではなく、積極的に讃える必要がある」。

イギリスのもっと新しい数値を調べてみると、図書の貸出しに占める成人フィクション、成人ノンフィクション、児童書の割合のうち、成人フィクションは、一九九四-九五の年度で五四%、二〇〇七~〇八の年度で四七%に減少している。『読書と読者』のイギリスの数値よりもかなり低くなっているが、実はイギリスの図書館はこの一〇年以上の間、貸出が減り続けていて、その減少の大部分を占めているのが、成人フィクションなのである。他の分野の利用が増えているわけではないし、四七%という数値も、日本の図書館と比べるとやはり多い。フィクションの利用の減少が、図書館全体の利用の減少を招いている事実に注目すべきであろう。

公立図書館の主たる機能が、楽しむための本の貸出であることは、「恥じるべき秘密」たった。『読書と読者』は、アメリカの図書館が一九世紀の時代から現在まで繰り返し、「フィクションの利用を減じ、図書館サービスの情報的側面を強調する」ためにさまざま試みた方策を紹介している。二冊貸し出す本のうちの一冊はノンフィクションに限るという「二冊方式」、新刊のフィクションの購入は六か月遅らして、新刊小説の利用意欲を減退させようとする「六か月規則」などもあった。この事例は一九世紀の話なのだが、後者は、日本でもつい最近のベストセラー複本購入問題の中で、作家・出版者・図書館研究者なとがら本気で提案されていたのを思い出す。しかし、アメリカではその後も、有能な館長や図書館員によってさまざまな努力がなされたのに、気がついてみればフィクションの貸出の比率はそれほど減じることもなく、やはり六〇%を超えていた。

また、一九九〇年から二〇〇四年までのいくつかの調査によると、文学の読者は読書をしない人と比べると、社交的で、頻繁に芸術、スポーツ、コミュニティの生活に関与している比率が高く、文学以外の読者は、両者の中間なのだが、真ん中よりも文学の読者に近い当たりに位置する。フィクションを読み、読書をすることが多様な社会活動を活発化させ、他の分野の読書も高めるのである。そのような事例に基づき、『読書と読者』の著者は、「事実や情報の提供がフィクションや物語よりも本質的にすぐれているという見解」を批判し、図書館は楽しみのための読書を積極的に進めるべきだと強調している。

日本においては、何割の蔵書が何割の貸出を支えているかという調査は、一九八三年の伊藤昭治氏等による神戸市立中央図書館の貸出状況調査がよく知られている。この調査では、ポピュラー部門では二割の蔵書で全貸出冊数の五割を支え、五割の蔵書で八割五分の貸出を支えている事実を明らかにしている。この調査内容は相当衝撃的に受け取られたようだが、アメリカの調査と比較すると、アメリカの方がはるかに、極端なまでに利用が特定の蔵書に偏っていることがわかる。

日本では全貸出冊数のうち、フィクションがどれだけの割合を占めているのだろうか。「フィクション」の内容や、貸出統計の分類の分け方の違いもあるので、正確に外国と比較することはできないが、二〇〇八年度の岡山市立中央図書館と幸町図書館の数値を調べてみると、AV資料なども含む仝貸出冊数のうち、成人の日本の現代小説(分類F)の貸出の割合は、中央図書館が二〇%、幸町図書館が一六・二%である。文学全体の9分類の貸出の割合は、中央図書館が二五`・八%、幸町図書館が二一・四%となる。AV資料や雑誌を除いた図書一般・図書児童だけで割合を出すと、成人の分類Fの貸出の割合は、中央図書館が二二・八%、幸町図書館が二四・一%、9分類全体の割合は、中央図書館が二九・三%、幸町図書館が三一・八%となる。幸町図書館はAV資料の貸出の割合が大きいので、図書だけに限ると、小説の割合は大きくなるが、それでもアメリカやイギリスの図書館と比べると、はるかに割合は小さい。アメリカのように、六〇%以上などという数字が出ることは、日本の図書館では小規模館でもほとんどないのではないか。
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