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柚月裕子 著 『風に立つ』

2024-02-24 | 本の紹介
昨日は一日中小雨が降り、最高気温が4℃にまでしか上がらないとても寒い日で、
暖房のきいているリビングから出ずに、朝から夜遅くまで読書三昧、1冊読了しました。

柚月裕子 著 『風に立つ』 中央公論新社

2022年の春から1年間、読売新聞夕刊に連載されていた小説で、
手作業で鉄器を作る表紙絵、舞台は岩手県盛岡の南部鉄器の工房です。
この工房の親方は、問題を起こし家裁に送られてきた少年を一定期間預かる制度
「補導委託」を引き受け、非行少年を自宅に住まわせ工房で働かせることにします。
一緒に働く30代後半の息子は、父のことは職人としては一目置いていますが、
仕事一筋で決して良い親とは言えなかった父の思いもよらない行動に戸惑います。
自分たち姉弟には、一緒に遊ぶことも、出掛けることも、何かを教えてくれることも、
笑顔を向けることも、優しい言葉さえかけてもらえなかったのに、
何故、他人の子ども、しかも非行少年にこれほど優しくするのか!

ある登場人物から、
「…本を読むとね、人が抱える苦しみや悲しみは昔から変わらないんだってわかるんだよ。
…人がその苦難とどう向き合いどう乗り越えたのかってことが書いてある。…
こんな辛い思いをしているの自分だけじゃない、みんな同じだ、頑張ろうって思えるんだよ。」
という言葉をかけられ、息子は1冊の小説から父親の過去と思いを知ることになります。
(岩手といえば、あの作家のあの切ない作品ですよ!)
「親は子供の応援者になってはいけない。味方になるんだ。」という言葉も心に響き、
親子とは、家族とは、一体どんな距離感で向き合うべきなのか考えさせられました。
親子だからこそ言ってしまう、あるいは言えない、ことがあり、
あまりに近くにいるとわからない、見えないこともあるのです。

ちょうど1年位前に柚月裕子さんの『教誨』を読み、
著作の中では2018年本屋大賞2位となった『盤上の向日葵』が一番心に残っています。
好きな作家さんのお一人です。

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