先日の芥川賞・直木賞発表、そして昨日の本屋大賞候補作発表と、出版界がにぎやかです。
一次投票が昨年11月1日より本年1月4日まで行われ、全国の504書店、書店員665人の投票があり、
その集計の結果、10作品が「2018年本屋大賞」ノミネート作品として決定しました!
対象は16年12月から17年11月に刊行された小説で、大賞作品は2次投票を経て4月10日に発表されます。
・伊坂幸太郎 『AX アックス』(KADOKAWA)
・辻村深月
『かがみの孤城』(ポプラ社)
・小川糸 『キラキラ共和国』(幻冬舎)
・知念実希人 『崩れる脳を抱きしめて』(実業之日本社)
・今村昌弘 『屍人荘の殺人』(東京創元社)
・塩田武士 『騙し絵の牙』(KADOKAWA)
・原田マハ 『たゆたえども沈まず』(幻冬舎)
・柚月裕子 『
盤上の向日葵』(中央公論新社)
・村山早紀 『百貨の魔法』(ポプラ社)
・今村夏子 『星の子』(朝日新聞出版)
芥川賞候補作の『星の子』、雑誌ダヴィンチで1位の『かがみの孤城』、私の一押し『盤上の向日葵』と、
注目の作品ばかりです。
私は今のところ10冊中6冊を読みましたが、まだ読んでいない作品で話題になっているのが
俳優の大泉洋を主人公にした、完全あてがきの“主演小説”『騙し絵の牙』。
企画発案当初から映像化も視野に入れてスタートし、著者と出版社に加え、芸能事務所、
そして主演となる大泉との4者による綿密な打ち合わせと試行錯誤を重ねて誕生した、異色の文芸作品。
これから読むので楽しみ♪
ちょうど読み終わったのが原田マハ著『たゆたえども沈まず』(幻冬舎)、良かったです!!
1886年、栄華を極めたパリの美術界に流暢なフランス語で浮世絵を売りさばいた実在の日本人画商・林忠正。
時を同じくして天才画家フィンセント・ファン・ゴッホは、
放浪の末パリにいる画商の弟・テオの家に転がり込み、テオは兄の才能を信じ献身的に支え続けます。
林忠正の仕掛けた「ジャポニズム」の波に乗ったのが印象派の画家たち。
その後の「ポスト印象派」の画家たちも名を上げていきますが、どうしても評価されなかったゴッホ、
その悲しく辛い生涯が、弟のテオ、ゴッホの才能を見抜いていた林忠正、と絡めて描かれます。
作品のタイトルは、フランス パリ市の標語だそうです。
パリの紋章にはラテン語で”Fluctuat nec mergitur“と書いてあり、
これはフランス語に訳すと”Il tangue mais ne coule pas(揺れはするが、沈没はしない)”となります。
歴史的に多くの苦難や惨事、災害が起こったパリは、揺れても決して沈みはしない。
私はベルギー在住中に、オルセー美術館やクレラー・ミュラー美術館、ゴッホ美術館で、
たくさんのゴッホの作品を見てきましたし、絵の描かれた場所やゴッホとテオの墓地まで行きました。
一番好きな絵はアルルのカフェを描いた「夜のカフェテラス」でしたが、
ゴッホの生涯を詳しく知るうちに軽々にどの作品が好きと言えなくなっています。
今や億のお金で取引されるゴッホの絵が、あの頃せめて1枚でも今の値段で売れていたら、
今の世界的評価を知っていたら、と思わざるを得ません。
毎週見ているTVの「旅するフランス語」も、今、ちょうどゴッホを訪ねる旅となっています。