カワセミ側溝から(旧続・中岳龍頭望)

好きな言葉は「のこのこ」。好きなラジオ中継「相撲」。ちょっと苦手「煮た南瓜」。影響受けやすいけど、すぐ忘れます。

P2

2010-03-26 | 映画
P2 Trailer (2007)


P2/フランク・カルフーン監督

 P2というのは地下二階駐車場という意味のようだ。パーキング2ですね。3もあるようで、地下ながら結構広い駐車場のようだ。この映画の場合大きなビルの下にある普通の駐車空間。つまり都会の閉鎖空間の象徴的な場所なのかもしれない。
 クリスマスの夜なのに残業で一人会社で頑張っている。日本だとありふれた状況だろうけれど、この時点で少しこの女性は変わっている感じはする。家族は当然のようにクリスマスパーティのために彼女を待っている状況のようだ。繰り返すが、日本では当たり前であっても、おそらくこのような状況で仕事をやるようなお人よしということなのかもしれない。基本的にいい人すぎる人ということも考えられる。
 やっと片づけて帰る算段になり車に乗り込むと、何故かエンジンが掛からない。仕方が無いのでタクシーを呼ぶが、扉が開かず外に出ることができない。何故か警備員も不在で一階から外に出られないようなのだ。ついてない日はとことんついてないようだ。気持ちは焦るがどんどん裏目に出てしまう感じだ。仕方が無いので再度地下の駐車場から外に出ようとするのだが…。
 気がつくと、拘束した相手は地下駐車場の夜間警備員で、どうも以前から彼女のことを知っているらしい。服もドレスに着替えさせられており、鎖で足を繋がれたまま二人きりでクリスマス・ディナーを楽しもうという算段らしい。もちろん彼女は恐怖と嫌悪しか感じていない。ストーカーは自分の計画通りことが運んでいることとは裏腹に、彼女がことのほか喜んでいないことにかえって疑問にすら感じているらしい。そこのあたりは典型的な変質者という感じなのだが、当たり前のように行き違う感情に、恐怖以上の憎悪がどんどん増幅していくことになる。彼女のためと称しながら同じく拘束していた上司を殺してみたり、何とかその場を逃れても駐車場からは出られない状況が続いたり、ホラーとサスペンスが続いていく仕掛けである。
 この映画がもう一つ恐ろしいと感じたのは、この変質的ストーカーの行き過ぎた行動に苦しめられることで、被害者の女性のみならず、おそらく観ている人も同じように、激しい憎悪のためにストーカー本人を殺したくなっていくことにあるようだ。そういう意味では、途中から僕自身は結末は予感はしていた。それ以外にこの映画を終わらせるわけにはいかない。そうでなければ観るものは、この映画自体に憎悪を募らせることになってしまうだろう。
 後味が悪い映画のはずなのに、妙にカタルシスを味わえるということもあって、なかなか楽しめたのだった。何事もやりすぎるためには、これくらいのことが無ければならないということなのかもしれない。もちろん、それで正当化されていいのかは、冷静に考えるとよく分からない話ではある。それこそが人間的な感情であって、そういう感情を激しく揺さぶられる侮れない作品なのではないだろうか。

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