カワセミ側溝から(旧続・中岳龍頭望)

好きな言葉は「のこのこ」。好きなラジオ中継「相撲」。ちょっと苦手「煮た南瓜」。影響受けやすいけど、すぐ忘れます。

酷い人ばかりが住んでいる国   658km、陽子の旅

2024-06-26 | 映画

658km、陽子の旅/熊切和嘉監督

 長い間疎遠にしていた父親が亡くなり、迎えに来た従兄の家族と共に青森まで葬儀に行くことになった。しかしながらこの女性はコミュニケーション障害のようなものを患っており、他人とうまく話を交わすことが苦手であった。そういう状況下、サービスエリア内で従兄の家族から置き去りにされ、所持金も携帯電話もない状況下ヒッチハイクで青森まで行こうとする。親切な人はなかなかいなくて、問題のある車ばかりに乗ることになり、途中強姦にまであう始末である。でもまあ、そういういざこざもありながら、さまざまな体験をするというロードムービーなのだろう。
 基本的には従兄家族が非道だという話なのだが、彼らは善意の塊で反省はたぶんしない。そういう中で、父親の葬儀のためとはいえ、大きな痛手を負う旅に出なければならなくなった女性の悲劇、ということのように見える。もちろん作っている側の趣旨は違うとはわかる。しかし見ている側にはそういう具合にしか内容が伝わらない。非常時に、自分の病症があるにも関わらず、ひどく無理をしてコミュニケーションをとろうとするが、過剰になりすぎて失敗したりしている。日本人の多くは冷たい人ばかりなので、誰も基本的には助けてくれない。病気っぽいので、実のところ避けてしまうのだろう。さらに降ろされる場所などもかなり条件が悪く、個人の努力で事態を打開するには、あまりにも難しいという状況である。だからこそひどい目にあわされ、さらに超過して懲罰を受けざるを得ないのである。何にも悪いことしてないのに。
 そういった可哀そうな物語なのだが、若き日の父親の幻想なども見るようになったり、なにか彼女の過去に、このような病気になるきっかけとなるものがあったのかもしれない。そうして旅をするうちに、彼女なりの希望を見出すことになったと、解釈すべきなのかもしれない。分かりかねるが、わかろうとすれば、そんな感じもしないではない。
 妙なものを観てしまったが、日本人の客観的な姿というか、変な人もたくさんいるし、優しそうな人もいないでは無いし、しかしなんだか必ずしもうまく行くわけでもない現実がある訳で、人は流されながらも生きていくしかないのかもしれない。普通なら心の痛手は深まる状況だが、そうはならなかったっぽいので、やはり彼女は強い人なのであった。
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