カワセミ側溝から(旧続・中岳龍頭望)

好きな言葉は「のこのこ」。好きなラジオ中継「相撲」。ちょっと苦手「煮た南瓜」。影響受けやすいけど、すぐ忘れます。

社会問題をコンパクトに   夜明けまでバス停で

2024-05-30 | 映画

夜明けまでバス停で/高橋伴明監督

 昼は自分で作ったアクセサリーの販売(そういう作家さんということらしい)をして、夜には住み込みで居酒屋の店員をしている女性がいた。ところがコロナ禍になってしまい、無能な上司の判断もあり失業する。この女性は頼るべき人が無い人のようで、そんなことでいきなりホームレス状態に陥ってしまう。スーツケースをガラガラ押して、夜はバス停でそのスーツケースに体を預けて眠る。顔は公園で洗う。みんな世間が悪いんや、ということである。しかしながらホームレスの先輩がいて、なんとか飢えをしのぐことができるようにはなったのだが……。
 コロナ禍とはいえ、上司のパワハラやセクハラ問題、女性としての生きにくさ、社会的弱者に対しての妙な偏見など、さまざまな要素をちりばめてある。それらはあんがいに分かりやすく表現されていて、外国人労働者の悲哀なども、日本が抱えているある種の冷たさのようなものが、浮き彫りにされる。我々は何も見ようとしていない。日本人は、自分の見たいものだけしか見てこなかったのではなかったか。様々な問題を盛り込んでいる割には、物語はコンパクトにソリッドにまとめられていて、なかなかに手際よく料理されている感がある。気持ちの置き所の整理がつかないままの問題もあるが、それはそれで宿題という事か。女たちは現実を見つめ直し、再出発に懸けていく、ということなのであろう。
 評判はいいのだが、なんとなく地味な作品で、広く知られてはいないのではないか。そういう意味ではちょっともったいない感じもする。いい映画は多くの人に見られるべきである。悪い奴は憎らしく、しかし改心した人はいい人だ。そこらあたりの葛藤もあって、いい出来栄えなのである。見落としていた人は、ぜひ気にしてみてください。
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