カワセミ側溝から(旧続・中岳龍頭望)

好きな言葉は「のこのこ」。好きなラジオ中継「相撲」。ちょっと苦手「煮た南瓜」。影響受けやすいけど、すぐ忘れます。

日本が貧しくなった原因の一つ   Winny

2024-05-31 | 映画

Winny/松本優作監督

 いわゆるウィニー事件と言われる、ファイル共有ソフトWinnyをめぐる顛末を描いた作品。ウィニーというソフトを使って、著作権のあるものを違法に流出させる人が続出したため、警察は開発者である金子勇という人物を、著作権侵害幇助の罪で逮捕するに至る。しかしながら安易に逮捕するに至った警察の捜査はいびつで、金子に罪をかぶせるために、脅したり言いくるめたりして調書をつくり、金子を追い込んでいく。そうしてついに、一審では有罪にさせてしまう。しかしながら弁護団も頑張って、この冤罪を何とかして晴らすべく、奮闘することになるのだった。その経緯で、日本のいじめのような社会の硬直的な在り方や、現在の停滞する経済状況の結果などを、考えさせられることになるのである。
 実際に金子という人物は、一種のソフト開発の天才的な人であるようで、典型的なオタクでありながら、新しい可能性を秘めたソフト開発がやめられなかったという事らしい。結果的に悪用される問題のあるソフトを作ってしまったものの、このような誤った認識によって有能な人物が逮捕される事態になり、日本の技術停滞が起こったのだ、とする見解を示している。実際に拘留されたことや、その後自由にパソコン操作をすることも禁じられ、ウィニーの脆弱性を改める開発さえできないありさまだった。そのことで警察は被害を拡大させたともいえるかもしれないのだ。無罪判決後すぐに金子は心筋梗塞で亡くなってしまった訳で、さらに大きな悲劇へ導いてしまったように見える。警察の介入が人為的になされたことで、金子個人や日本社会に与えた影響は、決して小さくなかったのである。
 映画ではドキュメンタリーでは無いが、それなりに克明に顛末が描かれ、金子本人の人物描写や弁護団の個性的な面々も、それなりに面白く分かるようになっている。もちろん映画なのでフィクションもあろうかとは思われるが、日本の警察の考え方のずさんさや、この事件の社会的な重さというものが、よく分かる仕掛けである。実際に日本ではその後イノベーションが起きづらくなったともいわれていて、日本人全体を貧しくさせた警察の罪は、非常に重いものがあったということになる。日本人の貧しさは、そのような精神性であるということになるのだろうか。
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