おとなの事情/パオロ・ジェノベーゼ監督
仲間同士のホームパーティのような集まりがあって、三組のカップルと一人の独身男が一緒に食事をとっている。実はもう一組いつもは参加しているのだが、浮気がバレて別れてしまったという(だから不参加)。そこで皆で携帯をテーブルにおいて、かかってきたメールや電話を見せ合うゲームをしようと提案される。何も秘密が無いのなら参加できるはずだという言葉に、皆は従わざるを得なくなり、そうしてかかってきた内容に、それぞれが一喜一憂することになっていくのだった。
基本的に一つのテーブルを囲んだ会話劇で、フラッシュバックなど過去の出来事に飛んだりすることはない。おそらく舞台でも再現可能、といったところだ。実際この映画は様々な国でリメイクされているらしく、その国の事情も交えて、会話を楽しむ仕掛けと言えるだろう。
実は告白すると、僕はラストの意味が分からず、もう一度見直してしまった。確かによく見るとその意味するところは分かった訳だが、なんだかキツネにつままれたような感覚を味わってしまった。基本的にはコメディというよりホラー色の強い展開で、正直結構心理的に怖かった。もちろん携帯に関する秘密なので、一定の方向性は予想出来ていたのだが、まさにそれ以上、といった展開になる。イタリアでもそうなるのか! ということと、やはり彼らは感情が凄いともいえる。日本版もある訳で、内容が分かったうえでまた観るべきものなのだろうか。あの場の修羅場的な臨場感に耐えられる人って、あんまり居ないと思う。日本人同士だと、その感情が強くなるものなのだろうか。よく分からないが、要するに脚本の勝利とも言えて、確かによく出来た物語である。
一つだけかなり違和感があったのは、娘と父親の会話かもしれない。いわゆる素晴らしい父親かもしれないが、やっぱり国が違ってもそれは無いのではないか。父親が娘に教えられることは、あんがいに限られている。ものすごくいい話なのだが、やはり幻想ではなかろうか。
まあ、そういうことで、ありそうな話ではありながら、やはり想像力の産物かもしれない。だから映画になり、リメイクされていったのだろう。そう信じたいだけかもしれないのだが……。