シチリアーノ 裏切りの美学/マルコ・ベロッキオ監督
1980年当時のシチリアは、世界の麻薬の取引の中心地であったとされる。そういう中でマフィアの激しい抗争があり、一方の組織の大物ブシェッタは危険を感知し家族とともにブラジルに身を隠した。ところがイタリア内では激しい抗争の末に死者が続出し、仲間の多くは殺されてしまう。ブシェッタは偽名で優雅な暮らしをしていたのだが、ブラジルの警察に捕まり、激しい拷問を受けたうえで強制送還されてしまう。途中自殺未遂などをするが助かり、ブシェッタは過去の麻薬に関わる人間の告発をする決意を固めるのだった。
ほとんどは法廷劇であるが、これが何だか変わっているのである。イタリアの法廷がこういう感じなのだろうが、受刑者がそのまま檻のある柵の向こうから法廷に参加している。そうしていちいち野次をくわえて怒られるのである。そうして証言者同士が証言で戦いあったりもする。それも暴言を交えながら。ちょっと信じられない光景でありながら、こういう裁判なら、それなりに面白いのは確かである。
ブシェッタは麻薬取引についてはかつては中心人物だったようで、それらの事情に精通している。おそらく司法取引をしていて、証言後は米国で隠遁生活をすることになる。収入が無いので奥さんの働きで暮らすことになるが、その地でもおびえて生活している様子だ。イタリアのマフィアは、命を取る復讐をする伝統があるのだろう。まあ、どこのヤクザもそうかもしれないが、特に復讐のためなら自分が死んででも相手を殺す美学のようなものがあるのかもしれない。それを守れなかったブシェッタには、裏切るなりの道理を持ちながら、行動していたという話なのかもしれない。
よく分からない面はあるが、ある意味では復讐劇だし、イタリアのマフィアというのが、捕まりながらも自由にしながら、さまざまな場面で活躍している様子も分かる。いまだにそうなのかは知りようが無いが、なるほどアメリカ映画でもイタリア系は恐ろしかったし、こういう伝統は、あんがい続いているのかもしれない。