カワセミ側溝から(旧続・中岳龍頭望)

好きな言葉は「のこのこ」。好きなラジオ中継「相撲」。ちょっと苦手「煮た南瓜」。影響受けやすいけど、すぐ忘れます。

誰も彼女の幸福を知らない   わたしの叔父さん

2023-08-16 | 映画

わたしの叔父さん/フラレ・ピーダセン監督

 酪農家で働く若い娘は叔父さんと一緒に暮らしている。実は高校生の時に父は自殺し(母は既に他界)、叔父さんに引き取られ、大学進学前に叔父さんが倒れ、そのまま手伝いながら暮らしている、という事のようだ。獣医を目指していたこともあり、その心得が少しある為に、まちの獣医が世話をして、再度勉強する道を示してくれている。また、教会の合唱団で歌う青年にも関心を寄せられていて、食事にも誘われるようになる。叔父さんのことは気にかかるが、それらの自分の為になりそうなことが順にうまく運びそうな予感があって、少しずつ生活も変わりそうな感じになるのだったが……。
 科白も少なく、このクリスという女性はおじさんの世話を焼く以外、きわめて寡黙で、挨拶はおろか、ろくにお礼さえ言わない。しかしなんとなく感情は分かるような演出にはなっていて、異常な愛情を持ちながらも心動かされてはいる女性の機微が、それなりに伝わってくる。そうして彼女は何もかも、おそらく観客の期待を裏切る選択をし続ける。おそらく彼女自身に対しても、嘘をつきながら……。
 まさか日本の封建時代の話では無いのだから、こんな展開はどうなのだろう? という感じの物語である。それにやっぱり現代だから、実際のところ、選択は自由である。叔父さんも基本的には、なにも縛るつもりもない。しかし、逆に依存を深めるのは娘の方で、いわゆる破滅に向かって走り続けるのである。
 なんだかもう不憫なのだが、北欧にもこんな偏狭な思想があるんだな、と改めて思うのだった。いや、意外だから物語になるのだろうけれど……。
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