カワセミ側溝から(旧続・中岳龍頭望)

好きな言葉は「のこのこ」。好きなラジオ中継「相撲」。ちょっと苦手「煮た南瓜」。影響受けやすいけど、すぐ忘れます。

日本人に最も嫌われたからこそ

2023-08-09 | ドキュメンタリ

 今井紀明という人の取り組みを紹介したドキュメンタリを見た。
 今井さんは高校生の時にイラクに行って人質になって、日本政府の計らいで解放されたのは良かったが、社会的に激しいバッシングを受けた時の人だった。その当時「自己責任」という言葉が盛んに使われ、心を壊しかけたが、なんとか大学は卒業し、今度は不登校やいじめの当事者を支援するためのNPO法人を立ち上げて、現在も活動を続けているのであった。
 イラクの人質事件というのは、当然いまだに大きな問題として、本人も、家族も含めての周りの人々にも影響の残っているものである。時間的な問題で一定の距離を置いて考えられるようになった現在でも、僕らだって容易に思い起こせる出来事だった。今井さんがいまだにNPO法人で、いわゆる社会問題に取り組み続けていることともおそらく関係があって、だからこそこのようなドキュメンタリが作られているのだろう。
 そのような興味の跡先に、しかし大人になった今井さんという人の、一定の純粋さとしたたかさのようなものが垣間見えて、あれだけの圧力を受けた後に心の傷を抱えながらも社会運動を辞めようとしない現在があるというのは、なるほど凄いことかもしれないと素直に感じるのだった。イラクの問題はマスコミのバッシングを後押しにして、多くの人が若い今井さんの身勝手さを罵った。せっかく助かった日本人の命だったが、社会の圧力は精神的に今井一家全体を押しつぶそうとして、いわば自殺をさせようとしていたようにも見えた。僕もいくばくかの反感を感じたのは確かだが、そこまではしかし行き過ぎだという印象は持っていた。少なくとも若い人の人生は、若いまま終わりになるだろうと漠然と感じていたように思う。ところが時を経て印象的な目がそのままの今井さんをみていると、人間はそれなりに強く生きることもできるんだな、と改めて感じた次第だ。特に日本人でそのような人がいるなんてことは、ちょっとどころかかなり意外な驚きだった。こういう人なら、社会からはみ出してしまう困難をかかえている若者を救えるかもしれない。そんな風にも思えるのだ。
 実際のところ、いまだに日本社会は生きにくいままだろう。それは日本に限らずのはずだが、しかしやはり日本は特に厳しいだろうと思う。そんなことはみじんも感じない日本の一般大衆がいる限り、その困難はつづくだろう。それでも死ぬことなんて無いのだということを体現する人がいる。そういう意味で、いつまでも日本人であり続けて欲しい人だと思った。
コメント
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