カワセミ側溝から

好きな言葉は「のこのこ」。好きなラジオ中継「相撲」。ちょっと苦手「煮た南瓜」。影響受けやすいけど、すぐ忘れます。

この人は女性好きというのは伝わる   紀子の食卓

2023-08-30 | 映画

紀子の食卓/園子温監督

 平凡な田舎の家庭に嫌気がさしていた紀子は、廃墟ドットコムというサイトで知り合った仲間と、ネットを通じて親しくなり、その後家出して合流する。そこではレンタル家族として、疑似家族を演じる連中と共に仕事をするようになる。そういう需要のある寂しげな人々が一定以上居るもののようだ。この物語は「自殺サークル」という映画の続編になっているらしく、女子高生が54人集団自殺する事件がこの最中に起こる、という設定になっている。若者の社会的な反抗というか、そういう社会へのアンチテーゼが、象徴的な集団自殺としてあらわされ、そうしてこのような疑似家族を皆が白々しく演じることで、本物よりも、もっと実際的で本質的な家族の在り方の欺瞞が描かれていくわけである(たぶん)。
 園子温監督は、いわゆるセクハラ事件などでもう仕事ができる状態ではないようだが、それ以前は非常に多作で、それなりのヒットを飛ばす仕事引受人という感じの人だった。そういう園監督が名実ともに業界で認められるようになった映画として、評価の高い作品である。出ている役者も、この作品での演技の評価が高い。そういう前触れはだいぶ前に聞いたような気もするが、実は忘れていた。見直して思い出したのである。僕自身も園監督作品はたくさん観ていると思うが、出来栄えにははっきり言って大きなばらつきがあると思う。何でも引き受けるので、そうなってしまうのではないか。今作品を観て思ったのは、確かに意欲作で監督の作家性の高い作品だとは思ったが、気持ちが悪いし、ちょっとたるみがあるというか、観ていてつらくなるところが多かった。実のところ今となってはそんなに面白い着想でもないし、実際退屈だった。家族が疑似だからどうだというのは、所詮演技である。危なっかしいというのは伝わるけれど、だからと言ってやっぱり作り物だし、最後の方は、どうにも訳が分からないのだった。
 ということで、今は福山雅治夫人の熱演と目の大きさに改めて見るべきところがあった、という感じの感想を持ったのであった。
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