カワセミ側溝から(旧続・中岳龍頭望)

好きな言葉は「のこのこ」。好きなラジオ中継「相撲」。ちょっと苦手「煮た南瓜」。影響受けやすいけど、すぐ忘れます。

匿名だから行われることもある

2023-07-23 | net & 社会

 精子提供者を知りたいと考えている人の、活動をとりあげているものを見た。不妊治療で精子提供を受けて生まれた子供が成長し、自分の本当の父親(実際には精子の無かった父親とともに育てられている)である精子提供者を知りたい、という事であるらしい。しかしそれが現行では許されないのは、精子提供者はドナーとして匿名が守られており、その条件をもとに精子提供に至ったという経緯があるからである。その多くは当時の医学生と考えられていて、すでに今の生活もあるので、本当の子供だからという理由でその人が自分の存在を知ることを、どのように捉えているのかは知る由もない。
 そうではあるが、そうやって生まれてきた子供としては、自分のルーツのようなことを知るという最小限の願いであり、その取り決めを後で変えることができないか、という純粋なものであるようだ。また、そのようにして育った子供の多くは、実際にそのように自分の由来である片方の親のことを、強く知りたいと思うようになるものだという。アメリカなどにもそのような事例があるともいう。最初から匿名でない条件で精子提供をするようなケースもあるのかもしれない。そのことでのトラブルがあるのかないのか、そこのあたりははっきりはしなかった。
 また、そのように精子提供で子供を持つ母親の例もあげられていたが、そもそも父親が誰であるかというような問題を子供に教えるつもりなどみじんもなく、自分もその精子提供者がどのような人間であるのかさえ知る必要が無い、と考えている人もいた。そうであるからこそ、子供を持つことが出来た、という事でもあるのかもしれない。
 なかなかに悩ましい問題なのだが、最初の取り決めであるならば、それが誤った考えであるということにならない限り、それなりにむつかしい問題だろう。ただ、そうやって生まれた女性が言っていたことだが、「自分のことなのに、周りの人の方が(平気で)妨害するし、意見で押さえつけようとするのが分からない」という。しかしこれは、最初の取り決めを破ろうとする行為であると考えるならば、十分に暴力的なことにつながっていて、気持ちは分かるし、そういう境遇の悩みであることはそうだろうとは思うものの、提供者の方を守るべき問題の方が先にあるという気はする。それは本人には残酷なことであるのかもしれないが、子供が生まれるというのは、そもそもそのような残酷さを含んでいるものとも考えることが出来る。親は選べないともいうが、親だってそのような子供になることは選んではいない。あえて恨むとするならば、子供が生まれない境遇にあった両親(もしくは母親)という事になり、それが間違いであったと、問うべきではないか。それは、子供が生まれない人には、子供を持つべきでない、ということと、結果的には通じるものがあると知るべきだろう。その人の生まれてきた機会を奪うべき問題なのか、とも通じるので、自分にも矛先は向けられているのである。だから社会が反応しているので、個人の問題に口出しを出しているという事なのではないのであろう。
 しかしながら有名なスティーブ・ジョブズも、本当の父親を捜したが見つけられなかったというし(彼の場合の父親は精子提供者ではないが)、実際問題として彼女以外にも多くの人が、そういう境遇にはあることだろう。個人の問題だから、その他の人は関係ないともいえるが、悩みの多くは個人の問題である。この問題は暴力的な仕打ちではないものなので、さらに事を難しくしている。匿名でない精子提供のドナーという問題を創ればいいと思うかもしれないが、そういう人に問題が無いかということも考えるべきだろう。
 また、現在は医大系の病院などでは、ドナーが不足して(このような問題が顕在化したからだろう)公式な精子提供による不妊治療が滞っているともいわれるし、逆にネット上では、そのような現状をぬって自分の精子を売買している人も少なからずいるともいい、結局はその利用者が増えているともいう。そういう状況が望ましいものかも、検証が進められるべきであろう。
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