X/タイ・ウェスト監督
テキサスの農場に民泊し、その場所でポルノ映画を撮影するために三組のカップル(撮影隊)がやって来る。とにかくアメリカの広大な土地にある田舎にあって、当時白人のブロンドが黒人のベトナム帰還兵とセックスしまくる映像という設定に、おそらくだが時代的にいい感じのエロがあるのかもしれない。しかしながらこの農場には不穏な空気のようなものが漂っており、池にはワニがいたりする。そうして実は農場の持ち主の老夫婦は、恐ろしい殺人鬼だったのだ。
もっともホラー映画だと知ってて観ているので、僕の子供の時代によく撮られていたエログロ作品なのだというのは、すぐに気づかされる。そういう古い感じの設定と映像が、おそらく何かのオマージュとしてだらだらと続く。確かに直接的なセックス・シーンもあるし、裸もふんだんにあるのだが、それはその後に続くホラーへの伏線だということも分かるし、彼らが次々に犠牲になるだろうことも予見されている。もっともそれなりに意外な結末ではあるのだが……。
前評判が非常に高い作品で、しかし実際はそんなに怖いことは無くて、変な言い方だが安心して観られるものになっている。殺され方のレパートリーだとか、セックスのおぞましさのようなものがテーマになっているようで、そこに宗教的なものが絡んで、あちらの国の人にとっては、精神的にものすごく嫌なものをみせられているのであろうことも分かる。そういう感じを笑い飛ばしているようなところがあって、そういうものが、批評家たちの自尊心をくすぐることになり、高い評価をせざるを得ない状況を作り上げているのだろう。アメリカ人というのは、なかなか厄介な人たちなのである。
ということで、さまざまな設定は実際にはよく考えられている作品のようだが、ホラー映画としては怖いものではないというものになった。続編もあるということで(実は三部作らしい)、長く楽しめる仕掛けなのであろう。怖くない作品であるのは助かるが(怖い映画は嫌いである)、さて、どうしたものだろうか。