C’MON C’MON/マイク・ミルズ監督
録音ジャーナリスト(そんなような仕事みたいということで。とりあえず)の男のもとに、妹の子である9歳の甥っ子を預かることになる。好奇心旺盛ではあるが、なんとなく気難しい甥っ子と一緒になって生活する中で、段々と疑似親子というか、世代を超えた友情のようなものが芽生えていく物語。
白黒映画で、街の情景とともに、甥っ子と男との会話が延々と続く。大人の視点しか持ち合わせていない男が、子供からの疑問などを受け止めていくうちに、段々と人間性を取り戻していくようなことになる。妹にも問題が多いようで、甥っ子の境遇は自分にかかってくる感触もある。そういう中にあって、困った状況にありながらも、甥っ子のことが自分の生活の中で、分かち難いものにだんだんと変化していくのである。
都会人の事情もあるけれど、このような会話劇であることから、一定の相互理解のあり方の理想のようなものが描かれているのかもしれない。そもそもこのおじさんがいい人なので、なんだかよく分かりにくい子供の要求を、次々と受け入れて行けるという気もした。本来は、母親も含め、元の家族と暮らしたいだろう心情もあるはずで、だからこそ難しい面が現れていくものと推察されるのだが、おじさんは辛抱強くそこのあたりを受け入れて、自分のしあわせについても、気づかされるものがあるということになるのだろうか。
正直に言って、僕にはあまりよく分からないところが多かった。そんなものかな、とも思うし、しかし映画的に面白い訳でもないし、そういう退屈さのある演技を眺めて、なるほどこういうのが高評価の映画なんだな、という感想くらいしか持たなかった。ちょっと気取ってるんじゃなかろうか。もっと問題が多くなる方が当たり前の世にも思うけれど、それではこういう気分のある映画にはならないということなんだろう。演技自体を楽しむということであろうけれど、そういうのは演劇を見たらいいんじゃなかろうか。しかしわざわざ映画にして、それなりの需要があるというのは、それはやはりホアキン・フェニックスの力なのである。お好きな人は、どうぞ、という雰囲気映画なのであった。