カワセミ側溝から(旧続・中岳龍頭望)

好きな言葉は「のこのこ」。好きなラジオ中継「相撲」。ちょっと苦手「煮た南瓜」。影響受けやすいけど、すぐ忘れます。

英語の話ではなく、家族の在り方なのである   マダム・イン・ニューヨーク

2021-10-07 | 映画

マダム・イン・ニューヨーク/ガウリ・シンデー監督

 ヒンディー語しか知らない料理上手のインドの主婦シャシだったが、夫は外資系なのか英語が堪能で、子供たちは英語教育の学校に通っている。よく分からないが、インドは仕事や教育は英語で(おそらく収入に違いがあるためだろうけど。もともと英国植民地だったわけだし)、というのが多いのかもしれない。旧世代の伝統で子育て世代の女性は、家庭に閉じ込められているような環境にあるらしい。そういう中、ニューヨークで暮らしている姉の娘(シャシにとっては姪ですね)が結婚することになり、手伝ってほしいと連絡がある。そもそも英語ができない上に家族と離れることで、大変なプレッシャーと不安を抱えていたが、夫からは無理やりに一人で行くように言われてしまう。そうしてニューヨークに着くが、やはり英語圏なので英語を話さないことにはどうにもならない。大変につらい思いをして、一念奮起して英語教室に通うことになるのだった。
 インドにいるときは、主婦としての仕事をまっとうして、その才能も高い人だったにもかかわらず、その仕事について、夫は当然のように思っているうえに、何か蔑んでさえいる。子供も母親の英語由来の単語の発音の悪さをあげつらって馬鹿にしている。そうして英語ができない母親を恥ずかしいとさえ考えている。コンプレックスはあるが、日々の生活の中、英語を使うようなことをしないでも済むには済む。勉強する必要が無いのである。しかしいざニューヨークである。それはもう言葉無くして街に出ることすらできないのである。
 そうして少しづつでも勉強して言葉を覚えていくことで、まさに自分自身の世界が切り拓かれていくことになる。
 主演女優さんはすでに死んでいるらしい。何でも子役時代から伝説の女優さんだったが、結婚子育てで15年ぶりにカンバックして話題をさらった作品であるという。しかしその後浴室で事故のような死に方をしている。確かにものすごい美人で、撮影当時50近い年齢のはずなのに、その年齢なのだから少しは老けているはずなのに、その美貌は漫画の世界のように凄まじい美人ぶりである。これだけでも観る価値があるのではあるまいか。
 またこの作品は、海外でたまたまこの映画を観た一般人が、この映画の上映権を買い付けて日本での公開にこぎつけたといういわくつきである。日本の配給会社はいったい何をやっているんだ、という話である。まあ、日本ではまったく無名の俳優しか出ない作品を買い付ける勇気なんて、営利会社にはないのかもしれないが。しかしながらそういう奇跡的なことがない限りこの作品を観ることができなかった可能性を考えると、本当に人生にはもったいないことがたくさんあるんだろうな、という感慨を抱いてしまう。とにかく、なかなか楽しいだけでなく、単にジェンダー問題を糾弾するような作品を観るよりも何倍もその意味を理解するのに役立つ作品だと思う。デフォルメしてあるけど、これは日本人には必見作品なのではないだろうか。
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