来る/中島哲也監督
途中から、いったいこれはなんじゃ? と驚いてしまった。それで中島監督作品だったと知った。そうだったのか。やっぱりぶっ飛んでますね。
イクメン・ブログで人気があることが自慢のパパである田原だったが、マンションに何か憑き物がやってくる予兆を感じている。身の危険を感じるものの、このような場合どうしてよいかわからない。そこで民俗学者をやっている友人に相談すると、今度は怪しいライターの彼女らしいと思われるキャバ嬢を紹介されるのだった。しかしキャバ嬢には本当に霊感があるらしく、異変には気づいてくれる。けれど田原は、本心では真実をわかってくれている彼女が気に食わない。キャバ嬢にはさらに姉がいて、この姉の霊媒師が異常に能力が高いのだった。そうではあるが、この憑き物は、これまた想像以上に邪悪で強大な力があるらしく、物語はそれらの力に伴い壮大なことになっていく……。
時間軸もあるが、物語は重層的で、なおかつ前半と後半ではまるで違うお話めいてくる。主人公だって変わってしまう。一つの筋の物語のはずではあるし、憑き物自体は同じものだろう。しかし人間ドラマは軸足が変わっていき、その見方によって事実も変わってしまう印象だ。それぞれ楽しめるが、最後はなんだかよく分からないほどにスケールがでかくなって、文字通り大爆発を起こしてしまうかの印象であった。まあ、呆れるやら凄いやら、大変です。
基本的にはホラー映画だから、恐怖描写もあるんだけど、実際のところそんなに怖い映画ではない。ホラー映画の苦手な僕が、全く平気なレベルである。そういう意味では、本当に怖いホラー映画の好きな人には的外れなところがあるかもしれない。怖い描写があっても、それは一瞬の驚きであり、基本的にはサスペンスと人間ドラマである。まあ最後はちょっとアレですけど。
まあしかし、変だけど、このブレ幅の広いところが中島監督の面白いところである。いわゆる名作映画にはならないのだろうが、その変な印象が、ある種の感動を含んでいるような気もする。やりすぎて笑ってしまうこともあるんだけど、人間の感情を表に出そうとすると、こうなってしまう場合もあるのではないか。演じている妻夫木にはイラつく気分が付きまとったけれど、そういう人間がいるのも確かで、その後黒木華や青木崇高もいいんじゃないか。ものすごく邪悪だけど。でも主人公は岡田准一になっていったりする。お話についていくのは大変だけど、変な映画ながら楽しめたかもしれない。一緒に観ていた家族には呆れられたけど(ということは、一般的には呆れる映画なのだろうか?)。