チョコレートゲーム/岡嶋二人著(講談社文庫)
作家である近内は、息子の様子がおかしいと妻から言われる。どうも時折学校を無断で休んでいるらしい。話をしようにも、荒々しく拒否されるだけで取り付く島もない。ある日息子が家を飛び出して外泊した晩に、息子の同級生が何者かに殺されたことを新聞で知る。学校で何かあると考えた近内は、息子の学校に出向いていくのだったが…。
その後連続殺人が起こり、息子が飛び降り自殺してしまい、そのまま犯人ということになる。どうにも納得できない近内は、四面楚歌の環境の中、事件の謎をたどっていくのだった。
ここまでこじれた親子関係の修復のないまま、事件の解決だけが息子への償いになるような話になっていく。
携帯電話のない時代で、なおかつカセットテープが重要なトリックになっているということで、なんとなく古くはなってしまった作品である。しかしながら筋書きがしっかりしており、このような国産ミステリにありがちな、トリックの成立のためだけのお話に終わっていない。もちろん警察が無能だから成り立つような展開ではあるが、殺人を疑われている親の立場で、なおかつ息子を失った失意の中で奮闘推理する姿が、何とも言えない物語になっている。ちょっと可哀そうすぎる気もするけれど、中学生とはいえ、彼女もいたようだし、ちょっぴり大人のテイストのある人間劇になっているのではないか。
僕は作者である岡嶋二人のことはまったく知らなかったのだが、名前は「おかしな二人」をもじったペンネームで、二人の人の合作(アイデアと文章という分業をしていたらしい)で数々の小説を書いていたらしい。すでにコンビは解消しているようだが、この二人の関係そのものがミステリめいている。刑事コロンボにも、コンビ作家の仲間割れ殺人を扱ったものがあったなあ、などと思ったが、まあ、関係はありません。ともかく、なかなか読ませる悲しい話であった。