ウインド・リバー/テイラー・シェリダン監督
家畜の被害が出たためにピューマを狩りに来たハンターだったが、そこで一人の若い女の死体を見つける。足は凍傷が進んでおり、冷気を吸い込んで肺がやられ、その出血が凍って窒息したものとみられる。暴行や強姦の痕があり、逃げている最中のことであるのは見て取れる。殺人事件が疑われる中、州のFBIから一人の若い女が送り込まれる。カナダとの国境沿いの自然地区で、広範囲にわたって人材が足りないという。また、そこには原住民を中心に閉じた環境であることも段々と分かってくる。資源をめぐる産業はあるようだが、巨大企業が牛耳っているわけで、失業率は高く、地元若者は麻薬などに手を染めているものが多いのだった。暗く重い吹雪の中のような閉塞空間の中で、死んだ若い凍傷の女の足取りをたどることで、事件は妙な様相を呈していくのだった。
静かな展開から一転して、ものすごいバイオレンスにも発展する。もともと空気は重く、何かホラーめいた時間が流れるが、その後ホッとしたのもつかの間、多くの血が流れる。カタルシスが無いわけではないが、なんだかとひどく悲惨である。これだけの悪があり、どうにもならない閉塞があったのは想像できるが、だからと言ってこのような犯罪の連鎖(が恐らくあるのだろう)が無くならないらしいことが、やりきれないのである。主人公は復讐心があったと思われるのだが、それでことが済んだことにはならないだろう。大自然で強く生き抜くという信念こそが、運をも切り開く。しかし、ちょっとした息抜きなどで、そのような強さは簡単にもろく崩れることもある。
悲しいながらもよくできた、社会状況も反映させた秀作といえるだろう。