バースデーカード/吉田康弘監督
なんだか賢い子供である紀子は、10歳の時に母親を病気で失う。母は生前20までは誕生日に手紙を送る約束をしており、子供達には誕生日に毎年死んだ母から手紙が届く。その時期にあてた母からの思いのこもった内容が書かれているわけだが、その時々の成長する子供に向けて書かれてある内容が当然異なる。一種のミッションのようなことになっていくのだったが…。
「ある天文学者の恋文」と基本的には似た構造だが、もう少し時間のスパンも長いし、親子の愛の物語だから、成り行きも違う。母親と娘の関係として、何か女として自由にならない心情を解放するような意味合いもあるのかもしれない。
子役から成長につれて娘になるわけだが、母親役の宮崎あおいが見た目で若すぎるままなので、なんとなくバランスが悪い。ユースケ・サンタマリアも年頃の娘の親としては若すぎるかもしれない。要するに、なんとなくキャストのバランスが悪い感じが付きまとった。たくさんのエピソードが語られるけれど、何かその特殊な感じが、観る者との共感と離れていく感じもする。説明が今一つ足りないようなところがある。科白が唐突な感じから始まって、後から妙に説明的というか、そんな感じなのである。あんまり成功したドラマにはなっていないのかもしれない。面白そうなんだけど、それから盛り上がらないというか。
家族が早くに亡くなると、その他の成長のライフステージに、長い空白が開いてしまう。心の中では忘れてはいないのだが、実際には立ち会っていないので、時間のずれが生じてしまう。そういうところを手紙を通して、生きていた思いを通して、突破しようとするアイディアであるはずなのだが、惜しいというのが正直なところか。やはり早くに死んでしまうことは、他の家族にとっても不幸すぎることなんであろう。