イニシエーション・ラブ/堤幸彦監督
原作は読んでいるので、映画化と言われると素直に「?」と思っていた。映画なりに解釈が出来るとしたら、どうするんだ、ということである。ネタバレがあると楽しみが半減するようなどんでん返しミステリーなので理由を言うことはでいないが、それくらい疑問の方が大きいお話なんである。で、まあどうなのかというと、結論を確かめに行ったので、そりゃそうだろうな、という感じかもしれない。
小説もそうなのだが、基本的にはぬるいラブコメめいた物語が主なのだが、これが実に決まった感じの映像になっていた。僕は前田敦子の事はそんなに知らないのだが、実際には彼女のための映画という感じなのだ。いや、彼女無しにはこの映像化は無かったのではないか。原作はそうだが、しかし前田敦子がいるから映像化してもいいかも、と思ったのではないのか。演技がどうだとか言うことはともかく、そういうことは関係なく(たぶん)この映画に納得する人の多くはそう感じたことだろう。
舞台が僕の青春時代と同じなので、しかし僕は地方にいたので違いも無いではないが、なるほどというか、そういえばそんな感じだな、というのはけっこうよく分かった。とにかく皆よくタバコを吸い、仲間同士でつるんでいた。時代に反発もないではないが、それは単に時代をよく知らなかっただけのことだし、適当なところはあるにせよ、見栄を張ったり金が無かったりした。男女の告白の仕方だとか、いわゆる責任の有りどころのようなものは、個人的なキャラクターの考えもあるだろうが、なんとなく分かるものだった。今の人ならたぶん、少し共感が少ないのではないか。
そんなことを考えながら、幾分気恥ずかしいような気分になった。やはり鏡の世界は恥ずかしいのだ。ところが見終わったあと後ろの若い人が、「面白かった」とつぶやいていた。いや、他人(ひと)の感想だからそれはいいんだけれど、一緒に見ていたつれあいとも後で話をしたんだが、面白い映画かというと、なんだかちょっと答えにくい。面白くない訳ではないのだが、これを本当にどんでん返しのネタを知らずに観たのなら、ずいぶん違った印象を持ったのだろうな、と素直に考えてしまうのであった。