カワセミ側溝から(旧続・中岳龍頭望)

好きな言葉は「のこのこ」。好きなラジオ中継「相撲」。ちょっと苦手「煮た南瓜」。影響受けやすいけど、すぐ忘れます。

なんだかちょっとかわいそうすぎてノレなかったけど…   蠢動

2015-05-28 | 映画

蠢動/三上康男監督

 時代劇の雰囲気というのはかなりいいのだけれど、なんだか展開が妙なことになっていくな、という印象を持った。日ごろから単純化は良くないとは言っているものの、善悪が良くわからないというか。貧乏藩が幕府に隠れてずるをしようとしているのをバレるのが困るので、調査をしている人間を切殺し、更にその罪を自分らの仲間に無理に被せ、そうしてだまし討ちをしようとして、多くの仲間が共倒れになり、許せも糞もないだろう。そのような無情な藩は、現代人の目から見ると、つぶれてしまった方がよっぽどためになりそうだ。
 もっともそのような無情なもので藩をメンツの上で守らなければならないというのが武士だというのならば、やはり説明の上で命令を出して犠牲を出すべきではないか。家督を守らなければならない部下にとってみれば、裏切者・無法者の罪をだまされた上に着せられ、無残に殺されるというだけのことになると、死んでも浮かばれないし、裏で知っている武家の者たちが、それでよいという悪代官ばかりになってしまうようにも感じられる。昔の武士が皆、多かれ少なかれそんな連中だったというお話ならそれでもいいけれど、みんな貧乏が悪くて殿様が悪くないという無責任さが横行するのは、のちの日本人にも良くない見本のように思える。
 とまあ、そういう話なのだが、妙なせりふ回しも無いではないのだが、みな悲しくて誰もしあわせにはなれなくて、妙な感慨のある映画だ。繰り返すが、雰囲気としてはなんだか良いのである。そういうもろもろがラストに向かってどんどん崩れていく映画だとすると、それはそれでいいのかもしれない。結果的にはどうも、それだけの犠牲があったから藩は守られたということにはなるだろうから、見事な策であったともいえるのだろう。実は結構ばれていたような感じもしたが、しかしそれで済んでしまったのだから…。
 妙に迫力があっていい感じもあるので、時代劇が好きな人には、たぶん面白い映画なのではなかろうか。
コメント
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