「絶対記憶」メソッド/小田全宏編(PHP研究所)
実は小田さんの講演を聞いて、実際に彼がすらすらと覚えた番号と単語をそらんじた姿に、何よりの説得力を感じて試してみたくなった。小田さんはあちこちで講演をされているようだから目にした人も多いことだろう。そしてその暗記の実際を見て驚かない人が居るのだろうか。ホントかウソかというような議論の必要のない、真っ正直な話なのだろうと思う。
記憶術を使ってこのように単語をたくさん覚えたからと言って、いったい何の意味があるのか、という疑問がわくのも自然の事だとは思う。実は真っ先に僕はそう思った。馬鹿らしいと一笑してしまってもそれは自由だと思う。実際確かにそういう面はあるのかもしれない。いや、あるとしても、その先の事を知らないのだから仕方が無い事なのかもしれない。坊さんが悟りを啓くということするが、もちろんそれとは別のことではあるが、しかし、その悟りとは、啓けてない人には分からないという禅問答的な真理があるとしたら、そういうことに少し似ている可能性がある。この本を使って実際にやってみようという気になって、そうして自分自身がその体験を達成できたとしたら、人はどうなるか。それを知りたくは無いですか。僕は知りたいと思った訳だ。
結果どうなったか。
ここで少しばかり大げさなことを言いたい気持ちはある。しかし僕はある意味で正直者なので、やはり正直に言いたい。以前の僕とは見た目では何にも変わらない。そうしておそらく能力的にも、実際はそんなに変わっているとは言えないだろう。しかしはっきり言おう。僕は100個の単語を間違いなく覚えてしまっている。その事実こそ、自分自身にこれほどの感動をもたらすとは、まったくもって驚くべきことだ。
そういう意味では、僕は完全に別人になる程の変化をもたらされた、といういい方もできる気がする。何故なら、小田さんの話を聞く以前の僕は、そういうことをしようともしなかっただろうし、また、恐らく少しも出来はしなかっただろう。しかし今の僕は、この本に書いてある単語を100問そらんじて言えるし、たぶん明日も明後日もそのことを忘れないだろうことを知っている。また、新たに100問やってみろと言われても、たぶんそれは達成可能だろう。やるかやらないかは別として、僕にはそれができるということを知っている人間になってしまったのである。
実はこれほどの感動を多くの人と共有したいという欲求と、そんなことに関心の無い人に知らんぷりして教えたくない欲求が両方ある。知らない人は平和かもしれないが、ざまあ見ろ、である。知っている人は間違いなく同志だ。というだけの話だが、その道を分けているのは、たった一つ、やってみるか否かだけの話なのだ。そうしてはっきり言って、やってみるということになると、できない人は一人も居ないはずだ。出来ない人は、やらない人に過ぎないからだ。
結局お勧めしている訳であるが、ほんとに騙されたと思ってやってみるといいですよ。人間っていうのは、いろいろとやり方を知らないだけのことで、やり方さえ覚えるとその能力は素晴らしいものがあるということを、自分自身が身をもって体験できるのだ。人によっては人生がガラリと変わるということになる可能性だって、本当にあるのだろう。
そういう意味では多少は危険な書物かもしれないので、知らないでいい人は平和に生きていってください。
ちなみに僕のつれあいも普通に簡単にできちゃったみたいで、そうしてなんだかさらっとしているので、器用な人は、かえってこの気分には違いがあるのかもしれませんけどね。本当にお勧めなのは、やはり記憶力に本当に自信のない人なのかもしれません。