J.R.モンテローズについては、ほとんど知らない。
CDのガイド・ブック等で、幾らか目を通した程度である。
白人のテナー・サックス奏者であるが、「その音は黒い」とあって、興味をもった。
「ザ・メッセージ(ストレイト・アヘッド)」と言うアルバムが、いいらしい。
ブルー・ノートに「J.R.モンテローズ」と言うアルバムがあり、それを入手したので聞いてみようと思う。
そのアルバムのライナー・ノーツにJ.R.モンテローズのプロフィールが記されていた。
なんだか、ひとつのことが長続きしない人のようだった。
もしかしたら、わがままで、生意気で、付き合いにくい人なのかも知れない。
「J.R.モンテローズ」は、1956年の録音である。
パーソネル、収録曲は、以下の通り。
アイラ・サリヴァン{tP)
J.R.モンテローズ (ts)
ホレス・シルバー(p)
ウィルバー・ウェア(b)
フィリー・ジョー・ジチョーンズ(ds)
1.ヴィー・ジェイ
2.ザ・サード
3.ボビー・ビン
4.マークV
5.カ・リンク
6,ビューティアス
チャールズ・ミンガスの「直立猿人」(1956)の演奏に加わっているとのことで、Lp盤のライナー・ノーツを見てみた。岩浪洋三氏が書いていた。
ジャック・モントローズと言う名前があった。「ジャック」となっていたが、これは、どうなのだろう。「J.R.」とあるのは、単に「ジュニア」と言うのを、そう表記しただけと何かに書かれているのを読んだ。
「J.R.モンテローズ」を聞いていて、「直立猿人」の雰囲気を彷彿とさせるところがよくあった。
何か一言、言いたいことがあるような印象を受ける、こういうタイプは、時折いる。
言いたいことの中味がたいしたことがない場合もよくある。
「カ・リンク」のシンバル、南国のリズム、なかなか楽しい。
別にかた苦しいわけではない。
力強い美しさがある。
ひとつひとつの音が明瞭である。
演奏へのただならぬ没入感がある。
人間技とは思えないような。
彼には鬼神が憑いている。
聞くものを拒絶しているわけではない、その優しさは自然に感じられる。
あの没入感は真似ができないと感じる。
没入しても独りよがりではない。
以上、バド・パウエルの「ジャズ・ジャイアント」(1949,50 Verve)を聞いていて、感じたことである。
きっと、あれを続けていたら、精神と肉体の芯がやすらかさを失う。
あれができるのは、才である。
才がなくては、できない。
高速で走り続けるチーター、それは持って生まれた才、しかし、いつまでもとはいかない、生物には限界がある。
緊張の美であって、弛緩のくつろぎではない。
いろんな人がいていい。
遠ざけはしないが、あれだけでは、わたしは生きていけない。
バド・パウエルは、1966年、41才で死んでいる、ニューヨークで。
疾走する才能の姿。
嫌いではない。
もし、友だちだったら、「一緒に、海や山に行こう」と誘いたくなるような。
「サラ・ボーン・ウィズ・クリフォード・ブラウン」(1954 EmaArcy)。
サラ・ボーンの代表的アルバム、ジャズ・ヴォーカルの名盤である。
歌われているのは、以下の曲。
1.ララバイ・オブ・バードランド(バードランドの子守歌):たくみな節回し、スキャット、実にうまい。
2.エイプリル・イン・パリ(パリの四月):ジミー・ジョーンズの清々しくきれいなピアノ、クリフォード・ブラウンのトランペット、ポール・クイニシェットのテナー・サックス、ハービー・マンのフルート、サラ・ボーンの落ち着いた歌い方、素晴らしい曲になっている。ベースは、ジョー・ベンジャミン、ドラムは、ロイ・ヘインズ。
3.ヒーズ・マイ・ガイ
4.ジム
5.ユーアー・ノット・ザ・カインド
6.エンブレイサブル・ユー
7.アイム・グラッド・ゼア・イズ・ユー
8.セプテンバー・ソング(九月の歌):「few precious days」と歌われる。前、何人かのを聞きくらべ、このブログに感想を書いたように思う。人生のはかなさ・・・・。
9.イッツ・クレイジー
クリフォード・ブラウンが共演した女性シンガーは、ダイナ・ワシントン、サラ・ボーン、ヘレン・メリルの3人。ヘレン・メリルのは、同年同月、6日後の録音。
「アット・ザ・カフェ・ボヘミア vol.1」(1955 Blue Note)のCDに、「正式なジャズ・メッセンジャーズ出発点となる記念すべき名ライブ」との紹介文が付いている。
アート・ブレイキーは、1947年から1950年にかけて、15人編成の楽団を率いていたと言う。
1954年の有名なアルバム「バードランドの夜」は、アート・ブレイキー・クインテットとしてリリースされている。この演奏メンバーは、クリフォード・ブラウン、ルー・ドナルドソン、ホレス・シルヴァー、カリー・ラッセル、アート・ブレイキーであるが、これをしっかりした固定メンバーと見れるのだろうか。
1955年に「アット・ザ・カフェ・ボヘミア」が、リーダーをアート・ブレイキーとして、ザ・ジャズ・メッセンジャーズと言う名前で出されている。
前年には、ホレス・シルヴァーをリーダーとしてのザ・ジャズ・メッセンジャーズと言う名前でのアルバムがある。アルバム名は「ホレス・シルヴァー・アンド・ザ・ジャズ・メッセンジャーズ」。
「アット・ザ・カフェ・ボヘミア」のメンバーは、ケニー・ドーハム、ハンク・モブレー、ホレス・シルヴァー、ダグ・ワトキンス、アート・ブレイキーである。
トランペットが、クリフォード・ブラウンから、ケニー・ドーハムにかわっている。
ピアノのホレス・シルヴァーは、まだ一緒である。1956年に袂を分かつまで。
1958年にヒットした「モーニン」は、アート・ブレイキー・アンド・ザ・ジャズ・メッセンジャーズとして出ている。メンバーは、アート・ブレイキーとならびリーダー格だったホレス・シルヴァーが離れていて、名前が「アート・ブレイキー・アンド・・・・」となったわけである。
つまり、リー・モーガン、ベニー・ゴルソン、ボビー・シモンズ、ジミー・メリット、アート・ブレイキーの5人となる。
トランペットのケニー・ドーハムがいたのは、初期のしばらくだった。
テナー・サックスもベニー・ゴルソンとなっている。
以降、アート・ブレイキー・アンド・ザ・ジャズ・メッセンジャーズと言う名前が定着する。
「モーニン」と同年の「サンジェルマン」は、同じメンバーである。
1960年の「チュニジアの夜」では、テナー・サックスが、ベニー・ゴルソンからウェイン・ショーターにかわっている。
以上が、1960年までの経過である。
「アット・ザ・カフェ・ボヘミア vol.1」の収録曲は、以下の通り。
1.ソフト・ウィンズ
2.ザ・テーマ
3.マイナーズ・ホリデイ
4.アローン・トゥゲザー
5.プリンス・アルバート
6.レディー・バード
7.ホワッツ・ニュー
8.デザイファリング・ザ・メッセージ
ファンキー・ブームが起こる前のアルバムとなる。
このアルバムを通して聞くと、今となっては、おとなしく、熱気に欠けて聞こえる。
ケニー・ドーハムやハンク・モブレーの性格の反映でもあるのか。
俺が、気分が乗っていないだけかな。
ジャズのスタンダード・ナンバー「アローン・トゥゲザー」、愛するひとを哀しく求める歌。
ジョー・ウィリアムスのヴォーカルで聞く。
ヴォーカルでは、トニー・ベネットのものが定評があるようだ。
器楽では、エリック・ドルフィーの「メモリアル・アルバム」やチェット・ベイカーの「チェット」、ジャズ・メッセンジャーズの「アット・ザ・カフェ・ボヘミア vol.1」に収録されている。
順番に聞いてみる。
エリック・ドルフィーのは、曲云々でなく、圧倒的迫力。ドルフィーの存在感は凄い。
チェット・ベイカーのも、ディープで、淋しく、思わずひきこまれる演奏である。
この2曲を聞いて、ザ・ジャズ・メッセンジャーズのを聞くと、何だか凡庸で、大人しく感じられる。
マイルス・ディビスのアルバム「ワーキン」で「イット・ネバー・エンタード・マイ・マインド」を聞いたので、同じトランペットのチェット・ベイカーで聞いてみようと思った。
アルバム「チェット」のなかの同曲。
こちらは、キリリとひきしまった感じでなく、哀愁にあふれ、ソフトである。
メンバーは、チェット・ベイカー(tp)、ケニー・バレル(g)、ポール・チェンバース(b)、コニー・ケイ(ds)。
あくまで、トランペット・オンリーと言う演奏である。
「イット・ネバー・エンタード・マイ・マインド」は、リチャード・ロジャース作曲、ロレンツ・ハート作詞のスタンダード・ナンバー。
「わたしのこと、おかまいなしに、身勝手なことばかりしてると、そのうち、ひとりぼっちで淋しい思いをすることになるよ」と言うような歌。
「ワーキン」は、マイルス・ディビスの1956年録音アルバム、マラソン・セッションn'4部作「リラクシン」「ワーキン」「スティーミン」「クッキン」のひとつである。
また、レッド・ガーランドのピアノ演奏が素晴らしいと言うことでも知られた一枚である。
評判のスタンダード・ナンバー「イット・ネバー・エンタード・マイ・マインド」は、レッド・ガーランドのピアノではじまる。やさしく、美しい音色である。
ガーランドは、バド・パウエルの教えを受けたそうだが、パウエルには鬼神が、ガーランドには天女が寄り添ったかのようである。
ガーランドのピアノに続く、マイルスのミュートをきかしたトランペットは、なんともリリカルで、静寂を感じさせる。
マイルスは、このあたりが一番いいように思う。
さて、「ワーキン」(1956 Prestige)の演奏メンバー。
マイルス・ディビス(tp)
ジョン・コルトレーン(ts)
レッド・ガーランド(p)
ポール・チェンバース(b)
フィリー・ジョー・ジョーンズ(ds)
収録曲
1.イット・ネバー・エンタード・マイ・マインド
2.フォア
3.イン・ユア・オウン・スイート・ウェイ
4.ザ・テーマ
5.トレーンズ・ブルース
6.アーマッド・ブルース
7.ハーフ・ネルソン
8.ザ・テーマ
「ザ・テーマ」は、マイルス・ディビス・クインテットのクロージング・テーマ。
アルバムを通して聞いて、僕には、ジャズらしいジャズを聞いた気分。
木の葉の子守歌(ララバイ・オブ・ザ・リーブス)
1932年、ジョー・ヤング作詞、アニーズ・ペトカー作曲
「南部の心地よい自然の中で、木の葉の子守歌を唄って、眠らせておくれ」と言うような歌詞。
懐かしい故郷に帰って、その自然の中で死を迎えたいものだとの思いが複線にある。
器楽演奏で聞く。
・エディ・ヒギンズ・カルテットによる「スモーク・ゲッツ・イン・ユア・アイズ(煙が目にしみる)」で。スコット・ハミルトンがテナー・サックス。
・ジェリー・マリガン・カルテットによる「オリジナル・ジェリー・マリガン・カルテット」で。チェット・ベイカーがトランペット。
・デューク・ジョーダン・トリオによる「ジェラシー」で。
【本の紹介】
小倉美恵子著/オオカミの護符/新潮文庫/H26.12.1
ここのところ、読書から遠ざかっていた。
コロナで、家での時間があり、モダン・ジャズをCDで聞いてばかりいたが、なんだかあきてきた。
関心の広がりが減速してきた。
それで、手にしたのが、小倉美恵子著の「オオカミの護符」。
本屋で、ページをペラペラめくると、御岳山や三峯神社のオオカミ信仰のことが書かれており、興味をもった。
著者は、川崎市宮前区にある実家の土蔵の扉に貼ってあった「オオカミの護符」への関心を端緒として、そのいわれ、バックグラウンドを調べ、記録に残していく。
多摩川流域での百姓の暮らし、その上流の御岳山とのつながり、そこに成り立つ暮らしぶり、いにしえからのアミニズム的信仰、これらが、取材され、記されている。
例えば、「講」の活動や儀式が具体的に語られる。おそらく、これらは、貴重な文化資料となるのでないだろうか。
多くの取材記録があり、とても興味深く読んだ。
また、一昔前のわれわれの暮らしぶりのことも思い出されて、懐かしかった。
私として、いささかもの足りないと感じたのは、オオカミが信仰の対象となった理由について、もう少し言及があってもいいのでないかということだ。
いまはなき日本狼の生態・習性、人間との関係、山の生態系の中での位置付け、森を守るということと、森から流れ出る川の下流域を守ると言う観点で、さらに述べられれば、「オオカミの護符」への理解がさらに深まるのでないかと思った。
MJQのタキシードに蝶ネクタイと言うでたちでの演奏、その意図はわかるが、なんだかなじめない。
顔ぶれは、もともとはディジー・ガレスピーの楽団にいた者4人で、ミルト・ジャクソン・カルテットとしてスタートしている。
モダン・ジャズ・カルテットとなった時には、ケニー・クラークがいたが、すぐさま、コニー・ケイにかわっている。
1953~55年の「ジャンゴ」では、まだケニー・クラークがいる。
1955年の「コンコルド」では、コニー・ケイにかわっている。
1964年の「フォンテッサ」では、もちろんコニー・ケイ。
1974年に「ラスト・コンサート」。ジョン・ルイス、ミルト・ジャクソン、パーシー・ヒース、コニー・ケイのメンバーで、20年続いたわけである。
ミルト・ジャクソン・カルテット(MJQ)~モダン・ジャズ・カルテット(MJQ)
・P:ジョン・ルイス
・vib:ミルト・ジャクソン
・b:レイ・ブラウン~パーシー・ヒース
・ds:ケニー・クラーク~コニー・ケイ
MJQの演奏では、なんと言っても、ヴァイブラフォンの音が耳につく。
そして、トータルとして、音楽的な評価は別に、そのきれいな音の連なりに、ジャズの持つ大きなひとつの要素の欠如を感じる。
わたしがジャズの魅力と思うものが失われているのである。
「フォンテッサ」は、アトランティックからで、LPには、7曲収録。
A-1.ベルサイユ
A-2.エンジェル・アイズ
A-3.フォンテッサ
B-1.オーバー・ザ・レインボー
B-2.ブルーソロジー
B-3.ウィロー・ウィーブ・フォー・ミー
B-4.ウディン・ユー
ベラ・バルトークの1926年作曲のピアノ・ソロ作品、組曲《戸外にて》。
Im Freien
:En plein air
:Out of doors
:戸外にて
1.Mit Trommeln und Pfeifen: Pesante
:Avec tambourset fifres
:Pesante(Sippal,dobbal.../With drums and pipes...)
:笛と太鼓で ñ
2.Barcarolla: Andannte
:Barcarolle
:Bacarolla
:舟歌
3.Musettes: Moderato
:Musettes
:Musettes
:ミュゼット
4.Klänge der Nacht: Lento
:Sons de la nuit
:Musiques nocturnes
:(Az éjszaka zenéje / Night music)
:夜の音楽
5.Hetzjagd: Presto
:Poursuite
:(Hajsza / The chase)
:狩り
演奏者:アンドール・フォルデス、クラウド・フェルファ、ミシェル・ベロフ、エルザベート・トゥーサ他。
ミシェル・ベロフで聞く。
アイザック・アルベニスのピアノ曲「スペインの歌:Cantos de España」。
1.プレリュード(前奏曲)
2.オリエンタル(東洋風)
3.椰子の木陰
4.コルトバ(夜想曲)
5.セギディーリャ(カスティーリャ)
アリシア・デ・ラローチャのピアノ・ソロで。
ケニー・バレルのリーダー・アルバム、以下をCDで聞いたことがある。
かつて、「ミッドナイト・ブルー」を聞いて、魅せられた。
わたしの夜に聞くジャズ推薦盤に選定した次第。
そして、何枚かと言うことで聞いた次第。
「ブルー・ライツ vol.1」には、デューク・ジョーダン作曲の「スコッチ・ブルース」が収録されており、作曲者自身が、ピアノを弾いている。
「ケニー・バレル vol.2」は、初期のアルバムで、何回かの、メンバーも変わってのセッションのものである。
なんだか、ケニー・ドーハム作曲の「メキシコ・シティー」が印象に残った。
ドーハムがトランペットを吹いている。
●ケニー・バレル vol.2(1956)
●ブルー・ライツ vol.1(1958)
●アット・ザ・ファイブ・スポット・カフェ(1959)
●ミッドナイト・ブルー(1963)
以上は、いずれも、ブルー・ノートから。