ジャズ・ジャイアント

2021-06-10 | 【断想】音楽

 別にかた苦しいわけではない。
 力強い美しさがある。
 ひとつひとつの音が明瞭である。
 演奏へのただならぬ没入感がある。
 人間技とは思えないような。
 彼には鬼神が憑いている。
 聞くものを拒絶しているわけではない、その優しさは自然に感じられる。
 あの没入感は真似ができないと感じる。
 没入しても独りよがりではない。
 以上、バド・パウエルの「ジャズ・ジャイアント」(1949,50 Verve)を聞いていて、感じたことである。 
 きっと、あれを続けていたら、精神と肉体の芯がやすらかさを失う。
 あれができるのは、才である。
 才がなくては、できない。
 高速で走り続けるチーター、それは持って生まれた才、しかし、いつまでもとはいかない、生物には限界がある。
 緊張の美であって、弛緩のくつろぎではない。
 いろんな人がいていい。
 遠ざけはしないが、あれだけでは、わたしは生きていけない。
 バド・パウエルは、1966年、41才で死んでいる、ニューヨークで。
 疾走する才能の姿。
 嫌いではない。
 もし、友だちだったら、「一緒に、海や山に行こう」と誘いたくなるような。


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