古今和歌集に、在原業平の歌が三十首収められている。長い詞書がついたものが多く、特別の扱いを受けていることがわかる。その三十首を、このブログで一日一首のペースで取り上げた。
続いて、小野小町を取り上げようかと思う。古今和歌集には、十八首収められている。在原業平のように詞書がつくものはほとんどない。それぞれの歌単体の自立性が高いように思う。以下、その十八首。
花の色はうつりにけりないたづらにわが身世にふるながめせしまに(113)
思ひつつ寝ればや人の見えつらむゆめとしりせばさめざらましを(552)
うたたねに恋しき人を見てしより夢てふものはたのみそめてき(553)
いとせめて恋しき時はむば玉のよるの衣を返してぞきる(554)
おろかなる涙ぞ袖に玉はなす我はせきあへずたぎつ瀬なれば(557)
見るめなきわが身をうらとしらねばやかれなであまのあしたゆく来る(623)
秋の夜も名のみなりけりあふといへば事ぞともなくあけぬるものを(635)
うつつにはさもこそあらめ夢にさへ人目をよくと見るがわびしさ(656)
限りなき思ひのままによるもこむ夢路をさへに人はとがめじ(657)
夢路にはあしもやすめず通へどもうつつに一目見しごとはあらず(658)
海人のすむ里のしるべにあらなくにうらみむとのみ人のいふらむ(727)
今はとてわが身時雨にふりぬれば言の葉さへにうつろひにけり(782)
色見えでうつろふものは世の中の人の心に花にぞありける(797)
あきかぜにあふたのみこそかなしけれわが身むなしくなりぬと思へば(822)
わびぬれば身をうき草のねをたえてさそふ水あらばいなむとぞ思ふ(938)
あはれてふことこそうたて世の中を思ひはなれぬほだしなりけれ(939)
人にあはむつきのなきには思ひおきてむねはしり火に心焼けをり(1030)
おきのゐて身をやくよりもかなしきはみやこしまべのわかれなりけり(1104)