「日本狼は生きている」

2008-03-31 | 読書
 西田智著「ニホンオオカミは生きている」(二見書房/2007年7月20日発行/1600)を読んだ。
 昨秋、狼神社とも呼ばれる秩父の三峯神社に行き、境内にある三峯山博物館で、オオカミの特別展をみた。ニホンオオカミの目撃情報として、そこに展示されていたそれらしき動物の写真の撮影者が、「ニホンオオカミは生きている」の著者である。写真は2000年に撮られたもので、その著書にも収録されている。なんとも目を引きつける写真である。オオカミなるものを読者に知ってもらうためか、いつも多摩動物公園で見ているなじみのヨーロッパオオカミ(タイリクオオカミ)の写真も掲載されている。
 ニホンオオカミは、およそ100年前に絶滅したというのが定説となっており、西田氏の写真が公表された時には、それだけに話題となった。その後も、「あれは果たしてニホンオオカミだったのか」と論議が続けられ、いまだに波紋がある。これらの顛末のこと、剥製他でいまに残るオオカミの痕跡のこと、氏のフィールドワークのことなどが綴られていて、たいへん興味深く読んだ。
 全体を通じて感じたことは、もし本格的な調査が行われれば、わが国に、ニホンオオカミが生き残っているかどうかということぐらい確認できるのではないかというもどかしさである。
 ニホンオオカミに関心のある方は、一読するといいと思う。堅苦しい学者の専門書ではないので、読みやすく、漠とした狼とその周辺に関する知識を幾らか整理できよう。

 この本を読むことによって、去年、このブログ(9月27日)で、三峯博物館で見た写真について、「なんだか首輪のあとが残っているように見えた」と書いたのは、誤った感想であったことに気づかされた。