風音土香

21世紀初頭、地球の片隅の
ありをりはべり いまそかり

「書いてはいけない〜日本経済墜落の真相」

2024-06-12 | 読書


あの森永さんが余命を知ってから書いた渾身の1冊。
・・・ということを知り、俄然読みたくなった。
一方で、なぜ無名の出版社なのか、もしかしたらトンデモ本?
という、少々腰が引けた気持ちがなかったと言ったらウソになる。
まして内容がジャニーズやら、日航機墜落事件やら、
そしてこれまた話題となった「ザイム真理教」の続きという
なんか内容的にバラついている気がしたのも確かだ。
深掘りしているであろう「ザイム真理教」を読むべきか
それともあちこちの話題であろう本書を読むか散々迷って
つい「コスパ」を考えてこちらにしてしまったことを白状する。

読後の第一印象は、とにかく「すごい」。
バラついた内容という先入観はまったく覆された。
特に一番「今なんでこの話題?」と思っていた日航機事故。
ちょっとやそっとじゃ100%にわかには信じがたいが
もし本当にこういうことが裏で起きていたとしたら
現状の日本の政治や外交の問題の原因が確かに腑に落ちる。
びっくりするような陰謀論にも見えるけれど
でも確かに物事はその方向に流れている。
そして大手出版社が本書の出版を断ったというのも
読了後には理解できる。
バブル経済のあのタイミングと本当の正体。
中曽根、小泉が犯した罪。
政界、官界、外交の闇。
それらの本質が本書にわかりやすく書いてある。
それにしてもここまでとは・・・。

本書に書いてあることは、当事者である政界、官界はもちろん
各マスコミも、経済、政治などの評論家も知っていると思われる。
でも口を閉ざさざるを得ない状況。
彼らは果たして本書を書いた森永さんを
苦々しく思っているか、心の中で喝采を叫んでいるか。
書いた森永さんもすごいが
出版を決めたひとり出版社三五館シンシャがとにかくすごい。
「社員がいないので、何があっても自分が被ればいい」という覚悟と、
ジャニーズ問題→ザイム真理教→日航機事故と進めた内容。
それらの話題がスムーズに流れ、全て繋がってくる。
これぞ編集力。

でもさ、こんなもの見せられると
マスコミ報道をそのまま信じることができなくなる。
もちろん彼らの苦渋もわかるし、姿勢にも理解は示せるから
一方的に責めようとは思わないけど
じゃあ我々は何を信じればいいのだろう。

「書いてはいけない〜日本経済墜落の真相」森永卓郎:著 三五館シンシャ

 
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「緋の河」

2024-06-04 | 読書

桜木紫乃さんの作品は作家買いしてきた。
「情念の作家」と言われるけれど、実はハードボイルドだと思う。
クールで、極めて冷酷に登場人物の心情を描く。
それでいて底辺には温かい目を持つ。
不思議な作家。

本書を買ったのは作家買いということと帯のコピーによる。
実は全く内容について知らずに読み始めた。
実は世に出たトランスジェンダーのはしりとして知られる
カルーセル麻紀の人生を小説化した物語だった。
子ども時代から世に知られるまでの壮絶な人生の中で
徐々に感じられていく母親の慈愛。
彼女の評伝というより、家族の物語なんだなぁ。
語るべき言葉もなく読み終えた後は
心の中に温かいものを感じた。

「緋の河」桜木紫乃:著 新潮文庫

 
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書籍広告

2024-05-27 | 読書
ほぼ毎日、岩手日報と朝日新聞を読む。
事件や政治経済ももちろん読むが
スポーツ欄のほか、社会面や文化面の記事をじっくりと読む。
岩手日報は県内の人事、慶弔欄に連載小説も欠かさない。
社説も読むし、週末の書評や論壇も楽しみだ。

そして両紙ともに最後は書籍広告をじっくり読む。
仕事柄、これはどうしても欠かせないし、もちろん興味もある。
「月間住職」なんて雑誌があることもそれで知った。
↓先日の書籍広告(サンヤツ)ではこんな本が。




いやー、こんな本紹介されたら欲しくなるじゃん😅
・・・ってな感じで、
読みたい本、読まなきゃいけない本はキリがない。
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「ジャンプ」

2024-05-01 | 読書

すばる文学賞を受賞した「永遠の1/2」以来、
割と注目し、読んできた作家の作品。
「月の満ち欠け」もある意味そう言えるのかもしれないが
どこかミステリーっぽい雰囲気の作品が多い気がする。
本書も「あのカクテルを飲んだせいで起きた事件」的なものだ。
しかもそれが非現実的ではない。
誰しも「そういえば」と自らを振り返るきっかけになる。
私ももれなく「あの時ああいう結果をもたらしたのはあれが原因」
と考えようと思えば考えられる。
そうだよね。
私は大学時代、どうして高円寺に住んだんだろうね。

「ジャンプ」佐藤正午:著 光文社文庫

 
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「正欲」

2024-04-28 | 読書

人間はいろいろだ。
誰ひとり全く同じ人間はいない。
「そんなこと知ってるよ」と皆さん言うのだろうが
それはせいぜい理解の範疇だけだろう。
でも実はたくさんの人たちが他人には言えない
自分の特性やコンプレックスを隠して生きている。
性に関することはその最たるもの。
恥ずかしくて言えない向きもあろうが
絶対に理解してもらえないという諦めのためもあるだろう。
本書はそういう人たちの苦悩や
社会の無理解から来る誤解や差別の悲劇を描いている。
それは犯罪に繋がることなのか?
法律はどういう基準で定められている?

「頭の中に思い浮かぶ、あの人たち。
 田吉から見た対岸を生きる人々。
 ”多様性の時代”にさえ
 通り過ぎる街のすべてに背を向けられてしまう全員」

「万引きが快感につながる人がいるんだったら
 (中略)
 (そういう)人が建造物侵入容疑で逮捕って、
 更生という観点でみたらどうなんだろうって」

「電車は線路の形に合わせて、減速と加速を繰り返す。
 曲がったり、直進したり、
 レールの上から転落してしまわないよう、
 様々に動きを変えている」

「まともって、不安なんだ。佳道は思う。
 正解の中にいるって、怖いんだ」

「多様性って言いながら
 一つの方向に俺らを導こうとするなよ。
 自分は偏った考え方の人とは違って
 いろんな立場の人をバランスよく理解してます
 みたいな顔してるけど、
 お前はあくまで”色々理解してます”に偏った
 たった一人の人間なんだよ」

最後のセリフには背筋が凍った。
自分はどうなんだ?
週刊金曜日で多様性を促す記事を連載したけど
それは「”色々理解してます”に偏っ」てはいなかったか?
自分はどちらの岸にいるのだ?

「正欲」朝井リョウ:著 新潮文庫

 
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「宮沢賢治の地学教室」

2024-03-29 | 読書

根っからコテコテの文系人間だが
なぜか子どもの頃から地学系にはとても興味があった。
揃えてもらった図鑑シリーズでは
人体と地球の2冊ばかり開いていた気がする。
小学生時代は石を集めて標本を作ったり
(トミカのミニカーの箱がとても役に立った😁)
火山や地層、地球の成り立ちにも興味があり
化石を発見してみたいと思っていた。
(決して恐竜好きというわけではない)
そして極め付けは気象への興味。
天気予報より先に、
天気図を見て自分なりの天気予想するほど。

前振りが長くなったけれど
要は「まさしく自分のための本」が本書というわけ。
まぁ書いてあるのはほぼ知っている内容だけど
それらの事象を賢治作品と照らし合わせているのが特徴。
要は「地学を切り口とした賢治読本」であるわけだ。
実は全く反対の「賢治作品を切り口とした地学の本」もある。
この2冊はセットみたいなものだ。


こんなアプローチ方法も面白いなぁ。
というか、個人的には唯一理解でき興味がある地学を
どうして大学入試の際に選ばなかったんだろうという後悔が
また心の内に湧き上がってくるわけだ😅

「宮沢賢治の地学教室」柴山元彦:著 創元社

 
 
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「月夜の森の梟」

2024-03-26 | 読書

夫婦で直木賞作家である藤田宣永さんと小池真理子さん。
本書は肺がんで人生のパートナー藤田さんを失った小池さんが
まだ血が滲んでいる傷口のような喪失感を抱えながら、
より鋭敏になった感覚を持ちつつ暮らす中で書いたエッセイ。

喪失という名の傷口は
徐々にかさぶたになって癒えてはいくけれど、
かさぶたが取れて治ってもその跡は残って時々疼く。
傷が大きければ大きいほど。
できることは、以前に比べて少し欠けた日常を拾い集める作業。
それが本書だろう。
もうそこにはいない人の気配を感じると
突如、周囲の風景が彩色される。
鳥が啼き、木の枝が揺れ、雲が流れる。
赤と青と緑と黄色と紫と橙色と桃色と・・・色彩が鮮やかになる。
その心情の描写に刮目。

「月夜の森の梟」小池真理子:著 朝日文庫

 
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「歴史人」2024.4

2024-03-24 | 読書

この特集見出しにやられて衝動買い😅
先日のスサノオの本とかNHKスペシャルとか
なんかここんとこ古代史付いてるなぁ。
でもおかげで
それまでの凝り固まった知識からも脱却でき、
新たな知識も得られて認識を深めることができた。
大学の上代国文学で触れた古事記に興味が偏ってたけど
日本書紀もちゃんと読まなきゃいけないなぁ。
そうやって両方比べることにより
神話や伝説ではなく、事実が薄ら見えてくる気がする。

多少でも古事記や日本書紀に興味ある方
古代史に興味ある方や神話に興味ある方にはお薦めの雑誌。

 
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「スサノヲの正体」

2024-03-19 | 読書

タイトルと、「はじめに」に書かれた
「スサノヲの正体がわかれば、
 ヤマト建国と古代史の多くの謎が解けてくる」
の言葉に惹かれて購入、読了。
最初は、これまでの推理を基にした学説などに反論していて
「こりゃ面白い」と読んでいたのだが、
徐々にこちらも「推理を基にした学説」的になってきて
全面的に賛同までに至ることができなかった。

しかし、古事記と日本書紀を
蘇我氏と藤原氏による、それぞれの系統の正当性を
出自の神になぞらえて書かれたものではないかという考えや
(特に藤原氏による歴史改竄)
実はスサノヲこそが建国の父であったという仮説は
比較的同意できる説明となっている。
そうでなければ
例えば造り酒屋の杉玉の風習や蘇民将来伝説、
祇園祭や八雲神社、八坂神社への帰依や信仰など
今でも根強く残るスサノヲに繋がる風習は残っていなかったと思う。
以前から私が想像する「卑弥呼はったり説」も
本書の言わんとするところとは相反しない。


そういう意味では、読んで良かったと思う。
全面的に肯定したり、信用したりという説はあり得ない。
なにせ誰も見たことがないころのことで
なおかつ具体的資料もそれほど残っていないから。
状況証拠と推理しかないのだから、それは仕方ない。
一部でも「なるほど」と思うことがあれば
それを知識としてストックすればいいだけのことだ。

ところで、終章に示唆に富んだ一文があって
これには思わず唸ってしまった。
なるほどそういうことだ。
「日本列島で独自の文化を築き上げていた縄文人たちは
 多神教的発想をよく守り、
 大自然には太刀打ちできないとかしこまった。
 一神教の考えは正反対だ。
 一神教は唯一絶対の神が宇宙を想像し、
 神に似せて人を創ったと説く。
 だから、人は神になりかわって大自然を支配し、
 改造する権利を持つと考えた。
 人間の理性が、正義と考える。
 そして、この一神教的発想が、さらに恐ろしい文明を造り始める。
 一神教は砂漠で生まれた。
 生命を排除する苛酷な砂漠で生きていた人たちは
 豊穣の大地を追われた人たちである。
 だから、政敵や他民族を呪い、復讐の正当性を求めた。
 これが、一神教の原点だ。
 だから、『旧約聖書』の中で、神自身が復讐を誓っている」
明治維新から終戦までの日本も
「多神教」の神道を国教としながら
それを自然に求めるのではなく天皇神格化に求めた結果
一神教的な盲信の発想と相なった。
それが本書で一番腑に落ちた一節となった。

「スサノヲの正体」関裕二:著 新潮新書


 
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「世界のリテラシー」シリーズ

2024-03-02 | 読書

先日の新聞広告より。
いやー、このNHK出版のシリーズ全部読みたいや。
メインタイトルにもそそられるし
サブタイトルの世界史でかつて学んだ事象の物語を知りたい。
学生時代は年号と事象名覚えるだけで精一杯。
何があって、その後や周辺地域ににどう影響したのか、
世界史の面白さはそこにあると思うんだよね。

先日本屋で見つけたこれも
その場で買おうかどうしようか迷った本。
そうそう、大事なのは流れで学ぶこのメソッドですよ。


やっぱ買おうかな。
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「ある行旅死亡人の物語」

2024-01-16 | 読書

半分仕事、半分プライベートで、
自分のファミリーヒストリーを調べている。
何しろ私は花巻に生まれ育ちだけれど
父方、母方のそれぞれ祖父母たちに花巻出身者はいない。
ならばなぜ、今この時代に、我が家は花巻に住んでいるのか。
そんなことも調べようと思ったきっかけのひとつだし
中でも父方はあまりにも謎が多かったので
それをどうにか解き明かそうという気持ちも強かった。
また30代の頃にいろいろ調べざるを得ないことなどもあり
今健在でいる人間の中では私しか知らないということも多く
残しておきたい気持ちもあった。
ところが、ルーツを「調べる」という行為は
単に「何年に何があった」的な情報だけではなく
当時生きていた方々の人となりを
立体的に浮かび上がらせることであることに気づいた。
年号と、情報をつなぎ合わせ、
そこに生前のその人を知る方からの話を当てはめていく。
まるで骨組みに肉を纏わせ、服を着せるように。

「それでも今、私は死者について知ろうとしている。
 知りたいと思う。
 ”死”というゆるぎない事実の上に、
 かつてそこに確実に存在した生の輪郭を
 少しずつ拾い、結び、なぞること。
 それは、誰もが一度きりしかない人生の
 そのかけがえのなさに触れることだ。
 路上ですれ違ったような、
 はたまた電車で隣あったような一人ひとりの人間の内にも、
 それぞれの物語があり、それぞれの風景が広がっている」
           (「「ある行旅死亡人の物語」より)

私の場合は、
直接自分の体内を流れる血のルーツを調べているが
本書の(私の息子たちよりも)若い記者たちは
孤独死したひとりの高齢女性が誰であるのかを調べ上げた。
氏名や年齢、出身地を調べるつもりで始めた取材は
少女の頃、20代の頃の彼女の姿を見つける。
そこにはひとりの人間の人生という物語があった。
平凡な人生なんて誰にもない。
その人しか見ていない風景、その人しか触れない体験、
亡くなってしまったら無くなってしまうそれらを
おぼろげながら浮かび上がらせる行為は
その対象者が送った人生に寄り添うことではないか。
今まさにそういうことを行っている私は
彼らの取り組みを夢中になって本書で追いかけていた。
さすがはジャーナリスト。
そうやって調べればいいのかという参考にもしながら。

若手記者の2人。
おそらくこの仕事をしたことにより、
大きく成長したことだろう。
人に寄り添える、いいジャーナリストになって欲しい。

「ある行旅死亡人の物語」武田惇志・伊藤亜衣:著 毎日新聞出版

 
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「昭和ちびっこ未来画報〜ぼくらの21世紀」

2023-12-16 | 読書

こんな本を見つけて即買い😁
1950年〜1970年ごろの子ども向け雑誌などに掲載された
(その時想像した)未来予想図が載っている。
「復興には50年かかる」と言われた戦災からは
1950年代にはもう驚異的なスピードで復興し
1960年ごろからの高度経済成長によって
「昨日より今日、今日より明日が豊かになる」と皆が思い
「未来」の夢を見る時代だった。
本書にはその「未来」がたくさん詰まっている。

1950年代から60年代前半ぐらいまで
「未来」は復興後の世界だった。
みんながロケットを背負って自由に空を飛ぶ姿は笑えるが
一方でヘリコプターや立体交差が未来の姿というところには
当時いかに戦前からの暮らしが続いていたが窺われる。
この当時はテレビや自家用車、冷蔵庫すら高嶺の花だった。

驚いたのは1960年後半から1970年前半にかけて。
このページを担当した編集者やイラストレーターは
実用化されていない、当時最先端のテクノロジーを調べ
それらが実用化された姿を描いている。
モノレール、動く歩道、放送衛星(BS、CS)、
ファクシミリ、携帯電話、壁掛けテレビ、ロボット手術、
そして太陽電池にインターネット。
その頃からITや液晶技術が研究されていたんだねぇ。

1970年の大阪万博でも未来の技術が紹介されている。
私も子どもの頃驚いた(といっても行ってないから本で見た)
自動で風呂に入れる「人間洗濯機」は
現在介護用入浴システムに生かされているのだという。
狭い自宅の中でプライバシーを作り出すカプセルルームは
今カプセルホテルになってるよねぇ。

驚くのは「コンピューターライフ(1969年)」というページ。
絵とともに書いてある文を抜粋してみよう。
「いまから20年後、きみたちが、社会人として、働いている時代、
 コンピューターは、生活から切り離せなくなっているだろう。
 きみの健康も、きょうのドライブコースも、
 そして今晩の献立さえも、すべてコンピューターが教えてくれる。
 子どもたちも、学校へいかずに、家庭のコンピューターで
 勉強すればいいだろう。
 家庭のすべてが、コンピューター中心の
 未来世界(コンピュートピア)が、実現するのだ」
そしてそのページの端には
「テレビ電話も実現!きみの家で使えるのも近い」と

笑ったのはその続きにある「コンピューター学校」。
もちろんオンライン学習について描かれているのだが、
みんなわざわざ学校へ行って、ひとり1台のPCを使っている。
ところが右端の子はどうやらロボットによって立たされ😁
一番後ろの子はよそ見をしていたらしく
見張りのロボットに頭をコツンと叩かれている🤣
科学の未来は予測できても
人権の考え方の進化までは予測できなかったと見える。

本書では未来のエネルギーを原子力としているが
最後には未来の人類が滅びる姿。
その原因が・・・
「気候の変化」「気温の変化」「伝染病の流行」
そして「第3次世界大戦」(1968年のページ)
科学の進展だけではなく、
滅びゆく人類の姿までその通り描かれつつあると思うのは
ネガティブな考え方すぎるだろうか。
子どもたちは、いつから未来に夢を描かなくなったろう。
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「小さなトロールと大きな洪水」

2023-11-29 | 読書

フィンランドの作家&画家のトーベ・ヤンソンによる
ムーミンシリーズの、実は最初の物語がこれ。
1945年にたった48ページの小冊子として出版されたものの
本屋さんに置いてもらえず、新聞スタンドなどで売られたとのこと。
そういう経緯もあって2作目の「ムーミン谷の彗星」が
シリーズ1作目と思われてきたのだそうだ。
そして3作目が「たのしいムーミン一家」となる。

子どもの頃からムーミンが好きだった。
でも好きだったのはアニメの可愛らしいムーミンではない。
どこか不思議で神秘的でおどろおどろしい、
暗い森とムーミン谷の物語に魅了されたのだ。
アニメに通じる可愛い物語は
「たのしいムーミン一家」あたりからになるだろうか。
その変遷について、今回の読書と解説などを読んで
「そうだったのか」と得心した。

「小さなトロールと大きな洪水」の出版は1945年だから
書かれたのは恐らく第二次世界大戦中。
「ムーミン谷の彗星」が発表されたのは1946年だから
これもまた戦時中か、戦後だとしても直後に書かれたものだろう。
ムーミントロールとママが、行方不明のパパを探す旅の中で
たくさんの生き物が家をなくしたり、命からがら逃げたり
ムーミンたち自身も命の危険からやっとの思いで脱したりした末
ようやくパパを見つける「大きな洪水」は
まさしく一般の市民の戦時下での姿だ。
命の危機を伴う災害の物語である「彗星」もまた
突如として空からやってくる脅威の物語。
彗星はもしかしたら核兵器のメタファーなのかもしれない。
戦後処理の中で、当時の世界は東西冷戦前夜だった。

そして「たのしいムーミン一家」は1948年の発表。
もうムーミンたちを命の危機は襲わない。
明日が今日より明るいものとして描かれたりしている。
とはいえ、棲む森や谷は相変わらずおどろおどろしい雰囲気。
現代社会からは無くなってしまった「闇」がそこにある。
「闇」は見えないからこそ想像力につながる。
ムーミントロールの物語の魅力はそこにあるんだろうなぁ。

ところで、本書を改めて読んで気づいたけど
トロールたちってイメージよりはるかに小さかったんだね😅
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「滴る音をかぞえて」

2023-11-22 | 読書

詩人と知り合ったのは2005年。
ネットを通じてだった。
繊細な言葉を選んでブログを書いている人に興味を持った。
東京出張時や、その後の単身赴任時に何度か会っては
当時の彼女が抱えた複雑な境遇の話を聞き、
思想や思考、詩などの文芸作品について共感し合った。
とはいえ、その頃の彼女は不安定な立ち位置にあり、
どこか保護者のような気持ちもあった。
その後彼女は仕事を得、よき伴侶とともにいる。
最後に会ったのは東京にいた頃だったから10年以上前かな。

その彼女が詩集「あらゆる日も夜も」を出したのは2018年。
どうやら私のことも思い出してくれたらしく
思いがけず1冊送ってもらったのだが、
その詩集で第29回日本詩人クラブ新人賞を受賞した由。
すでに母となっていたが、以前と変わらない敏感な感受性。
繊細で、どこか危うさすら内包する言葉たち。

そして今回2冊目の詩集を出したとのことで、
また送ってもらった。
今度は新たな命を生み出した輝きでいっぱいだった。
そして育っていく子への慈愛の目。
いい人生を送れているな。
良かった😊

「滴る音をかぞえて」川井麻希:著 土曜美術社出版販売

 
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「言語の本質〜ことばはどう生まれ、進化したか」

2023-11-19 | 読書

コレ、意外に面白かったわけですよ。
もっと堅苦しくて学問的なのかなーと思っていたら
あまりこれまで触れられてこなかったアプローチで腑に落ちる。
主にオノマトペを切り口に、様々な実験も。
例えば割と前半の導入的に書かれていた実験結果。


このふたつの絵に「マルマ」と「タケテ」という名前の
どちらがイメージに合うかの実験だったが
丸い形と尖った形を音の印象に置き換えてみると
どんな言語を話している人たちでも似た傾向を示すとか
すごく面白い。
こういう切り口からだんだんその論旨が進む。
「へぇー」という言葉ががちょくちょく口から出てくる。

ところで、本文中に例として取り上げられる言語が
パスタサ・ケチュア語(南米)とかバスク語(スペイン)とか
カンベラ語(インドネシア)、バヤ語(中央アフリカ)、
ルバ語(コンゴ)、ニュルニュル語(西オーストラリア)とか
とてもマニアックなものが取り上げられていて萌える😁
言語名もまるでオノマトペみたい。

ということで、実はまだ読んでいる最中。
ちょっと仕事が混んでいて、なかなか進まないんだけどね😅

「言語の本質〜ことばはどう生まれ、進化したか」
今井むつみ・秋田喜美:著 中公新書


 
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