風音土香

21世紀初頭、地球の片隅の
ありをりはべり いまそかり

「世阿弥の能」

2012-06-30 | 読書
現代の能は
禅などと結びついて芸術の域に達しているが
能成立の頃、室町時代には単なる芸能であった。
翁猿楽を元にした呪術芸能が根底にあったものの
いわば現代のジャニーズのような
美少年による歌あり、踊りありの芸能だったようだ。
特にアイドルとして時の将軍足利義満の寵愛を受けた
世阿弥の人気は一時飛ぶ鳥を落とす勢いだったとのこと。

その後加齢とともに人気にかげりが出た世阿弥は
人気復興を目指して当時の世の人たちにウケる新作を作る。
それらは鬼道を基本としていた大和猿楽の流れを汲んだせいか
霊や神、仏、狂人、物の怪など異形がシテ(主人公)となるものが多い。
それらの役は人間と違う役を演ずるに当たって面をつける。
ワキは人間役なので面をつけないというルールがあるとの由。
なるほど。

世阿弥が著した「風姿花伝」に「時に用ゆるを以て花とすべし」
とある通り、世人にウケる流行ものが題材であるので
色恋、欲望、見栄、執念、邪心がテーマになっているようだ。
これは目からウロコ。
確かにいくつかの粗筋を見るととても人間臭い。
その上で最後は成仏するという、当時の宗教観も反映している。
(観阿弥、世阿弥という名前そのものが時宗の在家出家の名)
もちろんこの頃は神仏混淆が主体だから
神も仏も出てくるのだが、基本は仏教となっている。
(神仏混淆の思想である本地垂迹の原理も本書にわかりやすく書いてある)
単に寺社の庇護を受け、結びついただけではなく
当時の価値観に沿った結果宗教観を持つに至ったということも
煩悩を描くテーマとともに本書で学んだ。

翁猿楽の呪術的芸能が元、人間以外の役は面をつける、
観客にウケる演目を主に披露、宗教的道徳観醸造などなど・・・
我々の神楽に通じるところが山ほどある。
まして我々の神楽は山伏神楽とて神仏混淆そのもの。
その能の演目が身近な煩悩ということで
ますます近しい感じを覚え、ぜひ鑑賞したいと思った。

能の哲学について、もっとも印象に残ったのは「武士」のこと。
今の世も武士道がもてはやされるなど、
勇ましい様、純粋に命を懸ける様が美しいと思われているが、
「家」や「生き様」が大事だった江戸期以降とは違い、
仏教精神が大きな価値観の中心だった室町時代は
人を殺す「武士」は人間ではなく「修羅道」に生きるとされていた。
修羅道だからこそこの世に執念を持ち成仏できず
霊となって能の物語に登場してくるというわけだ。
現代も然り。
大義名分の有無にかかわらず戦争はただの人殺し。
ちなみに「人間」とは輪廻転生から来る言い方のようだ。
前世から生まれ変わり、次の世に生まれ変わる
六道(地獄道、餓鬼道、畜生道、修羅道、人間道、天道)のうちの
「人」としている「間」という意味である由。

謡は言葉がとても美しい。
掛詞や喩詞、リズム、響きなど徹底的に練られている。
声に出して読むとその良さがよくわかる。
真意が心にも沁みてくる。

 地謡:筒井筒、井筒に掛けし
 女霊:まろが、丈
 地謡:生いにけらしな
 女霊:老いにけるぞな
           (井筒)

 地謡:知らで程経し、人心
    衣の玉は有りながら、恨みありや
    ともすれば
    なほ、同じ世と祈るなり
    なほ、同じ世と祈るなり
           (班女)

そして
「この世とても旅ぞかし」(清常)
まさに。

「世阿弥の能」堂本正樹:著 新潮選書
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America

2012-06-29 | 音楽
"Let us be lovers.  We'll marry our fortunes together"
"I've got some real estate here in my bag"
So we bought a pack of cigarettes and Mrs. Wagner pies
And we walked off to look for America
"Kathy," I said as we boarded a Greyhound in Pittsburgh
"Michigan seems like a dream to me now"
It took me four days to hitchhike from Saginaw
I've come to look for America

Laughing on the bus
Playing games with the faces
She said the man in the gabardine suit was a spy
I said "Be careful his bowtie is really a camera"

"Toss me a cigarette, I think there's one in my raincoat"
"We smoked the last one an hour ago"
So I looked at the scenery, she read her magazine
And the moon rose over an open field

"Kathy, I'm lost,"
I said, though I knew she was sleeping
"I'm empty and aching and I don't know why "
Counting the cars on the New Jersey Turnpike
They've all come to look for America
All come to look for America
All come to look for America
                (Simon & Garfunkel)



何かを探して、
何者にかなろうとして、
34年前、故郷をあとにした。

探していたものはまだ見つからない。
いや、見つかっているのに気付かないだけか?
少なくとも
あの頃思い描いていたものよりも
もっとずっと抽象的なものだったんだろうな。

50歳をいくつか過ぎ
何者にかなろうとしていた自分は
あくまで自分でしかなかった。
でもそれでいいんだよね・・・と今思う。
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風をあつめて

2012-06-28 | 読書
幻のロックバンドと言われるけど
果たして彼らの音楽はロックだったのだろうか。
はっぴいえんどの曲は
「はっぴいえんどの音楽」というカテゴリーではなかろうか。

英語のカバー曲が中心だった当時のロックシーンの中
日本語でオリジナルを歌った彼らは
確かにザ・バンドやリトルフィート、
そしてバッファロースプリングフィールドなど
ウエストコーストやカントリーなどの影響を受けてはいたが、
凝ったリズムとギターのオブリガードに乗せて
コーラスを被せつつ歌にこだわったスタイルは
彼ら独自のものだった。
はっぴいえんどの前身エイプリルフールで
細野さんとともにメンバーだったヒロ柳田さんが
この本の中で「細野さんは歌のバックをやりたかった」と語る。
それがはっぴいえんど後のティンパンアレーになったと。

はっぴいえんどの魅力はそのサウンドはもちろん、
Dr.松本隆さんの現代詩のような歌詞も大きい。
代表的アルバム「風街ろまん」の世界は
松本さんの歌詞によって形づけられている。
抽象的な歌詞とうねるリズム、つぶやく歌を聴いてるだけで
リスナーの頭の中には昭和30年代の埃っぼい東京が
何となく浮かんでくるのだ。
こんなバンド、後にも先にも他にはない。
様々な才能(風)が集まって
一瞬結実したバンドはっぴいえんど。

唯一無二のバンドはっぴいえんどの姿を
この本は当時の原稿を元に徹底的に描いている。


「はっぴいえんどコンプリート」シンコーミュージック
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円万寺の山より

2012-06-27 | 散歩
高村山荘の後
西の山の端に鎮座する円万寺の山へ。
ここは古の時代、
神仏混淆の修験のお社。

山の上からの景色は
点在するエグネ(屋敷林)が美しい。
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高村山荘

2012-06-26 | 散歩






花巻の街から
ずーっと山奥に向かった先、
宮沢賢治さんの童話「毒ケ森」や
「なめとこ山の熊」の舞台となった西の山の麓に
かつて高村光太郎が疎開した庵が残っている。
周囲はかなり整備されているものの
それでも手付かずの自然がいっぱい残る。

モリアオガエルやサンショウウオの池、
夜中に亡妻智恵子の名を呼んだと言われる
智恵子展望台周辺は熊が出そうな山の森、
ヤマボウシの花が咲き、桑の実も久しぶりに食べた。
子どもの頃を思い出す懐かしい甘酸っぱい味だ。

ここでbikkiさんとrinrinさんがご対面(^^)
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無ら里

2012-06-25 | 食べ物・お店






花巻市郊外
田園地帯の中にある林の陰に
人気のナチュラルレストラン無ら里はある。
昼前からもうお客様がいっぱい。

何とか確保できたテラス席で
草花や木々を眺めながらのランチは
心が休まる。
メニューはハーフランチ。
この他にブロッコリーのスープと紅茶。
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モリアオガエルの卵

2012-06-24 | 散歩
初めて見た。
葉っぱについてる白い泡の玉が卵。
孵化すると、ここからおたまじゃくしが
ぽたんぽたん池に落ちる仕組みだ。
この池にはサンショウウオもいたけれど、
水面が光って撮影に失敗。

花巻・高村光太郎山荘にて。
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6月23日

2012-06-23 | 生活の風景
毎年書いてるが
今日は67年目の沖縄忌。
そして20回目の親父の命日。

千葉からやってきた叔母も一緒に
母ちゃん、お袋と墓参りをしたあと
花巻温泉のバラ園へ。
満開。
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新幹線車窓より

2012-06-22 | 
すごい。
すごいねぇ、岩手の風景。
さまざまなトーンの緑色が多層に重なった山々はムクムクと盛り上がり、
点在する屋敷林は田の水に逆さを写しながら
まるで3Dのパノラマ。
空一面に展開する雲はゆっくりと流れ
あたかもこの地の悠久なる時の流れのようだ。



今朝はカッコウの声で起床。
写真は自宅庭のテッセン。
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「能の物語」

2012-06-21 | 読書
現在は
「世阿弥の能」を読んでいるが、
その前に読んだのがこれ。
どちらも作家水野麻里さんにいただいた本だ。

能の入門ともいうべき本書は
4歳から能に関わっていたという白州正子さんが
自身の持つ古典や歴史、和歌などの知識を駆使した
いくつかの曲の意訳物語。
役者の所作や謡の懸詞、暗喩などから
場所や登場人物の気持ちや風景に置き換えて
わかりやすい短編の物語にしている。

この本を読むことで、能の魅力は
謡と演技と舞の総合芸術というだけではなく
台詞や謡の歌詞の表現にあると改めて感じた。
まともに能を見たことはないが
この「意訳」により
実際の能は直接的に表現されていない
言葉や気持ちを汲み取ることが必要と理解。
深いなぁ。
たったあれだけの舞台装置と数人の役者だけで
あれぼどの物語を語らせる能おそるべし。

それにしても白州さん、
本当に美しい日本語を書く。

 夏草の茂みをわけ入ったところには
 寂光の静かな光がたゆたい
 松の枝にかかる藤の花房も
 法皇の御幸を待つかのように
 美しく咲き匂っている。
 ことに青葉がくれの遅桜は
 さながら女院の姿に似て
 初花よりもめずらしく
 あわれなものに映るのであった。
        (「大原御幸」より)


「能の物語」白州正子:著 講談社文芸文庫
(友人まで公開)
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リュックひとつ分

2012-06-20 | 風屋日記
「もし二度と帰れない旅に出るとして
リュックひとつ分しか荷物を持てないとしたら
あなたは何を持っていきますか?」

NHKの番組タイトルを見て考えてしまった。
いろいろ考えてみたら
財布と携帯以外何もいらないかも知れない。
あとはタバコと歯ブラシ、眼鏡。
とりあえず着るTシャツとジーンズ、ipod。
本は?
いま読みかけのものだけでいいかな。
他には?
やっぱり何もいらないかも知れない。

意外に人間、物に執着ないのかも。
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レモンスカッシュ

2012-06-19 | 生活の風景
懐かしい。
いつの間にか姿を消したメニューだねぇ。
暑い日、汗をかいたあとはこれが一番。

むかーし昔、
いがらしゆみこの漫画に
「レモンスカッシュ5人組」ってのがあったこと
ふと思い出したり(笑)
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海と紫陽花

2012-06-18 | 散歩
いい天気になった。
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紫陽花2

2012-06-17 | 散歩






評判が良かったので
追加掲載(^^)
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紫陽花

2012-06-16 | 散歩
隅田公園にて。
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